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三菱商事は1月16日、米国でシェールガス事業を手掛けるAethon(エーソン)を子会社化すると明らかにした。純有利子負債23億ドルの引き継ぎを含めた買収総額は約1.2兆円と、同社で過去最大の投資案件となる。昨年4月に公表した経営戦略で「約3兆円以上の拡張・新規投資を計画する」としており、少なくない部分を天然ガスに費やす姿勢を示した形だ。狙いは何か。連載『クローズアップ商社』の本稿では、中西勝也社長の記者会見での発言などから、巨額投資の判断に至った背景に迫る。(ダイヤモンド編集部 猪股修平)
26年度内にも収益貢献開始の予定
27年度には連結純利益700億~800億円を見込む
三菱商事が発表した投資の概要を見てみよう。子会社化するAethonは主に米テキサス州とルイジアナ州にまたがってシェールガス権益を保有しており、液化天然ガス(LNG)に換算すると年間約1500万トンの持ち分生産量を有する。この生産規模は全米10位で「日本の年間LNG輸入量の4分の1に匹敵」する巨大な権益だという。
Aethonはメキシコ湾岸の産業集積地までのガスパイプラインの使用権を確保しており、三菱商事は欧州やアジア向けの輸出も検討している。さらに特筆すべきは、昨今のAI・データセンター急増による米国内の電力需要を取り込むなど、市況に応じて「米国内販売」か「輸出」かを最適に振り分けられるオプション(選択権)を自社で握ったことにある。
中西勝也社長は記者会見で「ガスの生産から輸送・販売までを一気通貫で手掛ける『自社販売型』の案件」と強調し、2027年度時点で営業収益キャッシュフロー2700億~3000億円、連結純利益700億~800億円が見込まれることを明らかにした。
これまで三菱商事の過去最大の投資案件は、11年のチリ銅事業(約4200億円)だったが、今回はその3倍近い総額1.2兆円の巨額投資となる。単独案件としては総合商社でも過去最大規模とみられる。株式取得は今年4~6月に進め、26年度内にも収益貢献が始まる。莫大な時間を要する新規開発(グリーンフィールド)ではなく、既に生産が始まっている既存資産(ブラウンフィールド)を狙い撃ちしたことで、掘削開始からわずか1~2カ月で生産・収益化が可能という「スピード感」が、過去の資源投資の失敗とは一線を画す。近年、伊藤忠商事や三井物産に純利益で後塵を拝していたが、巻き返しも視野に入る純利益の伸びが期待できそうだ。
三菱商事は半世紀以上エネルギー事業に携わってきた。ここにきて、LNGにさらに大きくかじを切った理由とは何だったのか。次ページで、中西社長の発言などからひもといていく。







