つい最近まで、「インフレになる!」と心配していたのだが、ここへ来て、状況が大きく変化している。
夏場以降、米国をはじめ世界の主要国の景気後退は一段と鮮明化しており、需要の増加によるインフレ圧力は低下している。
また、インフレ懸念の最大の原因の1つであった、原油や一部穀物価格は大きく反落しており、原材料価格の低下によって、企業の生産コストを押し上げる要因はかなり落ち着いている。
すでに米国では、今年10月の消費者物価指数が統計開始以来最大の下げ幅を記録するなど、デフレの足音が忍び寄っていることがわかる。経済専門家の一部からは「デフレ圧力が強まっている」との指摘が出ている。
実は、現在のような経済状況の下では、「インフレよりもデフレの方が厄介」だ。世界経済が不動産バブルの後始末を行なっている最中に、デフレが本格化することは、お金を借りている人の返済負担を増加させる可能性があるからだ。
これまでは米国を中心に、お金を借りて、その資金を不動産や原油などに投資し、多額の利益を上げる投資手法が、主流になっていた。それが崩れるきっかけになったのが、サブプライム問題だった。それに追い討ちをかけるように、今度はデフレの脅威が迫っているのだ。
過去最大に落ち込む米国消費
デフレスパイラル懸念が噴出
私たちは、経済低迷とデフレが重なったときの“怖さ”を十分に知っている。1990年代、バブルの後始末で景気の低迷が長期化したことに加え、“価格破壊”と呼ばれる「物価下落=デフレ」が重なった時期、私たちの生活にも悪影響が及んだことは記憶に新しい。
そういう状況が、今、世界的に起きる可能性が高まっているのだ。バブルの後始末とデフレの両方を一度に相手をすることは、口で言うほど容易なことではない。
11月中旬に米国労働省が発表した、今年10月の消費者物価指数は、前月対比マイナス1.0%と、1947年の統計開始以来最大の落ち込みとなった。この背景には、投機筋のオペレーションによって、原油や一部穀物などの価格が急落したことがある。