「みずほ銀行」の不正融資事件やホテル・百貨店の食品偽装が次々と明るみになるなか、企業のリスクマネジメントが問われている。公表されるべき多くの問題はなぜ、隠蔽されるのだろうか? そして、リスクマネジメントはなぜ、機能しないのか?
前編に引き続き、後編ではJAXA(宇宙航空研究開発機構)シニアフェローで工学博士の川口淳一郎氏と、ボストン コンサルティング グループ、パートナー&マネージング・ディレクターで事業再生のプロである秋池玲子氏に、リスクマネジメントのあり方について語ってもらった。
(構成 曲沼美恵 / 写真 宇佐見利昭)
宇宙開発の世界は意外に保守的?
「新しいこと」より「実績」重視
秋池 宇宙開発に限らず、プロジェクトにはどんなに力を尽くしても困難に陥ってしまう場面があるかと思います。事業再生の場合もそうですが、リーダーは非常に限られた時間、限られた情報の中で意思決定をしなければなりません。そんな時、なかなか「実はこんなに窮地に陥っています」と周りには言えないものではありませんか?
川口 それは、「窮地とは何か」という問題に絡む話だと思います。ロケットや人工衛星を飛ばすということに関して言いますと、ある種の不具合や想定外の事態、これはどうしても起こります。ただ、私自身はそのことによって「苦しい」とか「追いつめられた」という感覚は、あまり持ったことがないんです。
「はやぶさ」の時もそうでしたが、何か問題が起きたら必ず発表する。そうすることで、無駄なプレッシャーがなくなると言いますか、精神的には非常に楽になりました。