JAXA(宇宙航空研究開発機構)シニアフェロー・川口淳一郎氏(左)とBCGパートナー&マネージング・ディレクター・秋池玲子氏。背景にあるのは「はやぶさ」の実物大の模型(JAXA相模原キャンパスにて)

国際政治、経済情勢、そして技術の変化・変遷が激しく、先行き不透明な時代が続いている。一概に「これがベスト」と言えない状況の中で、リーダーは何を基準に、どう意思決定すればいいのだろうか?

小惑星探査機「はやぶさ」のプロジェクトを成功に導いたことで知られる、JAXA(宇宙航空研究開発機構)シニアフェローで工学博士の川口淳一郎氏と、ボストン コンサルティング グループ、パートナー&マネージング・ディレクターで事業再生のプロである秋池玲子氏が、不透明な時代の意思決定とリーダーのあり方について語り合った。
(構成 曲沼美恵/写真 宇佐見利昭)

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あえて逆を行くリスクを冒した

秋池 今回、是非、伺いたいと思っていましたのは、川口先生ご自身、リーダーとして何を基準にどう意思決定してきたのか、というご経験です。御著書などを読ませていただくと、「はやぶさ」の時は、次々と起こるトラブルにチームが見事に対処されています。これは、現在のように、先行き不透明な経済環境の中でチームを引っ張っていかなければいけないリーダーの方たちにも非常に参考になる話だ、と思いました。

 まずは率直に伺いますが、どうしたら、あのようなことができるようになるのでしょうか?

川口 実際は、止むに止まれず、という感じだったと思います。ほかに手段がないから、必然的にそうせざるを得ない。結果的に、それがうまく行ったということでしょう。

 本に書いたかもしれませんが、一流はめったに褒められないんです。一流が取り組むと問題が起こりませんから、評価されない。これに対して、二流が取り組むと想定外のことがたくさん起こる。それに対処するから、褒められる訳です。ですから、はやぶさのチームも含めて、多くは二流なんです。ただし、我々は三流ではなかった。