「優秀な者のみにスポットライトを当てると、組織は弱体化する」。長いリーダー経験から得られた教訓の1つです。リーダーにとって、成績優秀な部下はかわいいものです。しかし、リーダーにとって本当に大切なのは、いわゆる「できの悪い子」とのつき合い方なのです。

「どうせアイツは優秀だから」。
こんな雰囲気がまん延した

 私は支店長時代、月例の営業会議で「優れた営業部員の活動を紹介する」というコーナーを設けて、優秀者の仕事ぶりをみんなに報告してもらっていました。優秀者の発表ですから、当然会場は拍手に包まれ、会議に参加した人たちは口々に「すごいね」「偉いね」などの感想を述べます。

「発表を聞いて、みんなに真似して欲しい」という思いがあって始めた会なのですが、その会を2〜3回やった後に「前回の発表を聞いて、実際に実践した人はいますか?」と聞いてみたら、一人も手が挙がりませんでした。

 これにはショックを受けました。遠慮して手を挙げなかった人もいたでしょうが、あまり良い効果は得られていなかったのです。その営業会議はチームのミーティングというより、もう少し大人数の会議だったこともあり「優秀な人は優秀な人、自分は自分」と線を引いてしまい、「自分ごと」として受け止めにくかったのかもしれません。

 そこで私は考えました。優秀者ばかりでなく、お世辞にも優秀とは言えないけれど「こんな悩みを抱えつつも、こんなふうに奮闘している」という人に発表をしてもらうのはどうだろうか。そのほうがみんなの心に刺さるのではないか。