これが、役職定年の数ヵ月前に行われる予告面談の風景だ。話は、一段階上の上司か人事部長クラスから行われる。役職定年は多くの企業で導入されており、部門事情や個人の能力・実績如何で例外のケースはあるが、管理職の大半がこのような形で“ポストの明け渡し”を迫られる。

 退職優遇制度を選ぶ人は稀だ。多くの管理者の方が、この変化を受け入れ、次の役割に収まりまた仕事を始めるわけだが、そのスタート地点がここだ。ではA部長はこのキャリアショックをどのように乗り越えていくのだろうか。

キャリアショックを乗り越えるために
50代社員はどうすればよいのか

 まず、前出のA部長の心に去来するものは何だろう。確かに組織の若返りや多くの人材にマネジメントを経験させる会社の意図は理解できても、自分自身に訪れた転機をどう受け止めればよいか戸惑うはずだ。

 ヒントとなるのが、「キャリアトランジション」の考え方だ。簡単にいうと、ある役割は現実的に終了を迎える、ということ。つまり、一時的な不安・葛藤の時期を経るが、この間に次への準備がなされ、新たな役割への移行が始まるという考え方だ。

 下図を参照いただきたい。我々は若いとき、中年のとき、高年のとき、それぞれにその時期特有のキャリアショックに見舞われる。だが、そのショックをいつか乗り越え、そのたびに、より逞しい自分を作り上げている。振り返ってみるとそのようなことが多いのではなかろうか。このことはシニアのキャリアショックを乗り越える考え方としても大変参考になる。

◇「部長」から実質降格の「担当部長」へ――自ら折り合いをつけるためのプロセス

 A部長のこれまでの働き方は文字通り、管理者として組織目標の達成のために率先垂範するリーダーである。その動機は、昇進・昇格・昇給など“もっと偉く”なり“大きな仕事”をし、“人の上に立つ”が大きな要素であったはずだ。それが、ある日を境に、「担当部長」として実質降格を示唆される。これまで頑張ってきた時代に一幕が下ろされ、そこで部長は担当部長に“役替え”を要求され、これまでのアイデンティティが大きく崩れることになる。