この崩れてしまったアイデンティティの回復には、「自分を作りかえる過程」と、その時間が必要だ。最終的には、担当部長として、新たな役割・待遇を受け入れ、その役割で日々前向きにやっていくことが求められる。そのためには、これまでの働き方とその後の働き方に“折り合い”をつけ、繋ぎ目を縫い合わせる「自己調整」が必要だ。そのステージごとの過程を以下に示しておこう。

ステージ1:現状の役割の終了時期を知る
     *役職定年の来る日が半年後と告げられ、
      これを自分の時間軸に組み込む。
     *おぼろげに理解していた役職定年を自分の問題として捉える。

ステージ2:転機の認識と新たな役割・仕事環境で働くことをよしとする
      自己調整を図る

     *転機をどう受け入れるか煩悶しながら自己納得していく。
     *自分のキャリアの強みを今後にどう活用できるか思案する。
     *自己の思い通りにならぬことについて、
      妥協・折り合いをつける。

ステージ3:新しい役割・職場でまた新しい自分のキャリアを作り始める
     *肩書意識をヨコにおき、新たな役割・仕事を学び直し、
      ともかく仕事に夢中になる。
     *その職場・仕事でのやりがい、満足感を見出せるようになる。
     *自分なりにこの職場・組織を支えていこうという
      貢献感が実感される。

 分かりやすく要約するなら、過去の自分のこだわりを一時横におき、“新たな環境に自分をなじませていくための自分づくり”といえるだろう。この巧拙が前回まで見てきた様々な問題人材のタイプとなって現れる。

◇「マネジャー」から「プレーヤー」へ――前向きに受け入れるための“新しい役割の意味づけ”

 では、A部長は最終的にどのような落ち着きどころが望ましいのだろうか。【図表3】を見てほしい。新しい現実となるその後の働き方に適応していくには、職場でのポジション感覚、働く意味・意識、働く動機・モチベーション、能力や態度の大きな転換を要請される。端的に言えば、会社の期待の上で成り立っていた組織管理者が、会社の期待が半減する中で、自分の専門性で自立した「プレーヤー」として、その意識と行動を切り替えよ、ということだ。

 その方法論として、各論は様々あるが、大きなくくりの結論を言えば、これまでと今後とでは、働く意味、役割の意味が変わっており、この意味=価値観の変動を理解することが必要だ。生き方・働き方のギアチェンジを伴う価値観の変化、これを理解し、受け入れることが役職定年後のセカンドキャリアの始まりとなる。これが分かれば、自発的に多くの生き生き現役シニアを作り出すこともできる。