今回は、40~50代のおじさんたちにいじめ抜かれる、30代前半のテレビディレクターを紹介したい。この男性は数年前、中途採用試験を経て、大手の番組制作会社に転職した。しかし、そこでは先輩であるディレクターにいじめ抜かれる。その背後には、様々な人間模様が見え隠れする。
男性は、筆者のかつての「教え子」である。現在に至るまでに、30~40回はいじめについて相談を受けた。今回、彼と私が試みたのがいじめの構造を分析することだった。
読者の中にも、似たような境遇で悶えている人がいるかもしれない。そんな人たちが、自分の身に置き換えて、このエピソードから何らかの教訓を得てくれれば幸いである。
「もう、辞めようかな……」
憧れの新天地で待ち構えていた現実
「もう、辞めようかなと思う。だけど、何とか結果を出したいから、踏み止まっている。毎日、周りからバカにされる。自分がみじめになる」
キー局の一角を占めるテレビ局系列の大手番組制作会社(正社員数300人)にディレクターとして勤務する、三笠寛(仮名・32歳)はためらいながら話す。
筆者が2011年まで専門学校で教えていた際の、受講生の1人である。彼は、そこで文章の書き方を学んでいた。現在の大手番組制作会社には、1年半前に中途採用試験を経て入社した。倍率は、200倍ほどになるという。
それより前は、赤坂にある社員が10人に満たない制作プロダクションに、AD(アシスタントディレクター)やディレクターとして8年間ほど勤務していた。規模は小さいが、放送業界で名が通った「ギャラクシー賞」などを獲得した会社である。