弱い人がいるから、ほかの人の強みが輝く
漆 チームということを考えるとほかの人の弱いところを補完する、つまり人の役に立ったという気持ちや体験があると、その子はすごく伸びますね。
松田 自分のためより、他人のためのほうが伸びる?
漆 そうなんです。たとえば、英語の成績が200位くらいの子がいて、うちは生徒数が一学年200人ちょっとなんですが…。それが、あるとき、テストで突然1位になった子がいたんです。それでよく理由を聞いてみたら、後輩のためだと。後輩が親から「英語の成績が落ちたから部活をやめなさい」と言われて悩んでいるのを見て、アドバイスをするなら、自分が英語ができないとダメだ、と、勉強を頑張ったそうなんです。自分のためだと頑張れない子ほど、人のためだと頑張れるんですよ。
松田 大人でもそうですよね。会社に入って、仕事で貢献できたとか、認められたと思うと自信がもてるし、頑張れる。
漆 そうですね。特に、まわりからマイナスのレッテルを張られた子や大人が、ほめられて自信を持つとすごく強い。自己肯定感が低い子が、人の役にたったり、認められるとモチベーションが大きく上がって、人生の転機になることもあったりしますから。
見方を変えることで、善悪が変わる
漆 まわりから見てマイナスのことが、違う目で見たらプラスだったりすることもあるので、大人や教員はそれをよく見ておくことが大事かなと思うんです。
よく親御さんに言うのが「リフレーム」という言葉です。いつでもどこでも「悪」と決まっていることは、あまりないんじゃないでしょうか。たとえば、道路を200キロで走るという行動が、プラスに働く場所があります。どこでしょう?
松田 えっ?どこだろう。
漆 答えはレース場。レーサーの行動だったらプラスなわけです。つまり今の自分が見ているフレームに限定しないで、もうちょっと別の目でも見ましょうということなんです。
今、学校の中で見たら、この子は悪いほうに入るかもしれないけど、今後、成長したり、世界が変わったりしたらプラスになるかもしれないと自問しながらその子を見ると、活かしどころ、ほめるところが出てくるはずです。
松田 確かにそうですね。そのフレームを意識できる先生や親が増えてくれば、自己肯定感が高まる子が多くなっていくと思います。
今日は本当にありがとうございました。
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