長所と短所の考え方
漆 親は愛情から子どもの足りないところに目が行きがちなんですよね。でも、完璧な子どもなんていない。成長過程で、将来の長所が短所で出てくる時期というのがあるんです。短所と長所は、実は根っこは同じなんです。
たとえば「自立心が旺盛な子」というのは、「親の言うことを聞かない子」でもあるわけです。つまり、大人の目から見て、その個性が都合がいいと長所と呼ばれ、都合が悪いと短所と呼ばれるんです。それで短所だなーと思って、その芽をつぶしていくと、逆に長所も伸びなくなっちゃうこともある。短所と長所は表裏一体、時と場合で入れ替わるもの。だから、子どもは大目に見てあげる、長い目でみてだまっていてあげるということも大切なのではないかな、と思っています。
松田 長所、短所で言えば、僕が受けてきた教育も短所に注目してそこを克服する、というやり方だったと思います。たとえば、テストの科目で、算数が80点で国語が40点だったとすると、算数はいいから国語をなんとか平均に持っていこうってするんですよね。
でも、これからの教育は、その80点のほうを100点にするのにどうしたらいいのか、自分の強みをさらに伸ばす、というほうが全体的に伸びるのではないかと思うんです。
漆 そうなんですよね。1つ自信がつけば、それを苦手なものにも応用できるようになります。本にも書いたのですが、親の言動で子どもがやる気をなくすときがあって、テストが返ってきたときに、「算数よくても、国語がこれじゃあね」といった言葉だそうです。これは本当にもったいないことです。
もし、このときに「算数がよかったね。どうしたらこんなできるようになったの?」って、得意な方にフォーカスしてあげれば、自己肯定感が高まり、そこで自信をつければ、苦手な方にも応用していけるんですよ。
好きなことや得意なことが見つかるだけでも、大きな価値があることなので、親の目から見て、今は役に立たないことでも、よく見て、うんとほめてサポートして、自信を持たせてあげるといい。きっと未来への財産になるはずです。
松田 なるほど。
漆 本校の生徒たちを見ていると、自分の苦手を克服しようとか、マイナスに目を向けられるようになるには、その世界でトップになってからですね。
たとえば運動部なんかでインターハイ優勝とかオリンピックを目指しているようなレベル、トップ争いになってくると、好きなことだけをやっていのではなくて、弱点、苦手なことや嫌いなことも克服しないと勝てなくなってくるんです。それで自分なりに、あとは何が足りないんだろう、と考え始めます。
でも、それはもうトップになってからの考え方だし、好きでやっていて、目標があるからこそ嫌なことやつらいことにも自分から主体的に取り組めるんです。でも、そこまでのレベルに行く前に苦手克服を求めても難しい。まずは成功体験をつかむことで、自己肯定感も高められると思います。
ちなみに子どものやる気をくじく親の言動は、以下の通りです。
第1位 早くしなさい
第2位 勉強しなさい
第3位 ○○しちゃダメ