品川女子学院校長・漆紫穂子氏の連載も、今回が最後。
最終回では、新刊『伸びる子の育て方』のメインテーマである「自己肯定感」とは何か。
自己肯定感は、どのように育まれるのかについて語ってもらった。

世界から見ても深刻な日本の状況

漆 紫穂子(うるし・しほこ)1925年創立、中高一貫の品川女子学院の6代目校長。わずか7年間で入学希望者が60倍、偏差値が20上昇。「28プロジェクト」は生徒たちの心にスイッチを入れた。世界経済フォーラム(通称ダボス会議)東アジア会議にも出席。2012年国際トライアスロン連合(ITU)世界選手権スペイン年齢別部門16位で完走。年齢別部門の日本代表に選抜。著書に『女の子が幸せになる子育て』など。現場教員歴約30年の講演は、お母さんだけでなく、お父さんにも大きな反響を呼んでいる。

 財団法人「日本青少年研究所」が2011年に、日米中韓の高校生計約8000人に実施した調査で、「自分はダメな人間だと思うことがある」との質問に、「よくあてはまる」「まああてはまる」と答えた割合は、日本では83.7%でした。
 これは1980年の調査の約3倍にあたります。

 一方、「自分は価値のある人間だ」という質問に「あてはまる」とした割合も、日本が39.7%で4ヵ国中最低と、自己肯定感の低さが際立っているのです。こうした日本の現実を深刻に受け止めています。

 私は子どもたちとすごしながら、いつも、
「子どもが伸びるために一番大切なものは何か」
「どんな困難なことがあっても、一生幸せでいるには、在学中に何が必要なのだろう」
 と、考えてきました。
 そして、多くの卒業生を見てきたいま、たどりついた結論があります。

自己肯定感とは

 それは、「自分が好き」という気持ちをもっていることです。
 自分のいいところも、ダメなところもひっくるめて、自分を認め、肯定する気持ち。それを「自己肯定感」と言います。

「それってナルシストでは?」と思われるかもしれませんが、違います。
 また、周りが見えず、自信過剰な人とも違います。
 自己肯定感の高い人は、小さな子どもが、「ねえママ、聞いて! 僕、こんなことができたよ」と、屈託もなく話すのと似ていて、嫌みがないのが特徴なのです。

 自己肯定感の高い子は、気持ちに余裕があって、人に親切です。そして、自然と周囲に人が集まってきます。「自分が好き、人が好き、人に好かれる」。そういう好循環が生まれるのです。

 自己肯定感の高い人は、ひとつのことから別のことへと、自信を「平行移動」させることができます。

「一生懸命やった何かがある人は、受験勉強も一生懸命できる」

 これは、卒業生が後輩に言った言葉です。

 事実、部活動や課外活動で寝る間もなかったような多くの生徒が、そこで培った能力を、大学受験などに生かして、次々夢をかなえています。
 そして、その後、社会で待ち受けている荒波も、自分の力で乗り越えています。