品川女子学院校長・漆紫穂子氏の連載も、今回が最後。
最終回では、新刊『伸びる子の育て方』のメインテーマである「自己肯定感」とは何か。
自己肯定感は、どのように育まれるのかについて語ってもらった。
世界から見ても深刻な日本の状況
財団法人「日本青少年研究所」が2011年に、日米中韓の高校生計約8000人に実施した調査で、「自分はダメな人間だと思うことがある」との質問に、「よくあてはまる」「まああてはまる」と答えた割合は、日本では83.7%でした。
これは1980年の調査の約3倍にあたります。
一方、「自分は価値のある人間だ」という質問に「あてはまる」とした割合も、日本が39.7%で4ヵ国中最低と、自己肯定感の低さが際立っているのです。こうした日本の現実を深刻に受け止めています。
私は子どもたちとすごしながら、いつも、
「子どもが伸びるために一番大切なものは何か」
「どんな困難なことがあっても、一生幸せでいるには、在学中に何が必要なのだろう」
と、考えてきました。
そして、多くの卒業生を見てきたいま、たどりついた結論があります。
自己肯定感とは
それは、「自分が好き」という気持ちをもっていることです。
自分のいいところも、ダメなところもひっくるめて、自分を認め、肯定する気持ち。それを「自己肯定感」と言います。
「それってナルシストでは?」と思われるかもしれませんが、違います。
また、周りが見えず、自信過剰な人とも違います。
自己肯定感の高い人は、小さな子どもが、「ねえママ、聞いて! 僕、こんなことができたよ」と、屈託もなく話すのと似ていて、嫌みがないのが特徴なのです。
自己肯定感の高い子は、気持ちに余裕があって、人に親切です。そして、自然と周囲に人が集まってきます。「自分が好き、人が好き、人に好かれる」。そういう好循環が生まれるのです。
自己肯定感の高い人は、ひとつのことから別のことへと、自信を「平行移動」させることができます。
「一生懸命やった何かがある人は、受験勉強も一生懸命できる」
これは、卒業生が後輩に言った言葉です。
事実、部活動や課外活動で寝る間もなかったような多くの生徒が、そこで培った能力を、大学受験などに生かして、次々夢をかなえています。
そして、その後、社会で待ち受けている荒波も、自分の力で乗り越えています。