それとは別に、米国では新日鐵住金が米国内で持つ製法上の特許侵害に関して、ポスコに侵害の差し止めなどを求めてきた。それに対し、ポスコは米韓で特許無効を申し立ててきたのである。

 方向性電磁鋼板は、1953年に旧新日鐵が米国のアームコ社から技術を導入したものだが、68年以降は世界のトップになった。

 現在までに、米国のAKスチール社(アームコ社)、ドイツのティッセンクルップ社、中国の武漢鋼鉄、日本のJFEスチールに有償でライセンスを供与している。

 しかし、世界で年間約200万トン生産されている方向性電磁鋼板のうち、等級の高いものは約100万トン。その約30%をライセンスの供与を受けていないポスコと中国の宝山鋼鉄が生産しているのだ。かねて、新日鐵住金の宗岡正二会長は「何十年もかけて、数百億円を投じて開発してきた独自技術が、なぜこんなに早く追いつかれるのか」と疑念を表明してきた。

 新日鐵住金は、韓国の特許庁が表明した今回の“無効宣言”に対し、高等裁判所に相当する韓国特許法院に審決取り消し訴訟を提議する。

 米国の特許庁で係属中の残り3件の判断にも注目が集まるが、実は米韓における特許侵害をめぐる訴訟は、日本での不正競争防止法の訴訟には直接的に影響しない。

 韓国側は、自国の特許庁の判断を追い風にして巻き返したいようだが、必ずしも有利に進むわけではなさそうだ。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁)

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