「海外で働くこと」だけがグローバルではない

「グローバルに活躍する」といっても、多くの人のイメージは、「海外で働くこと」にとどまっているように思えます。

 しかし、セミ・グローバリゼーションの時代においてグローバルに活躍するとは、さまざまな国をまたいで活動し、そして多様な国々の現地において、求められる価値を提供することかと思います。

 それは第一に、自分自身がどのような環境においても、期待された価値を提供するということです。そして第二に、世界中に点在するさまざまな資源を把握し、統合し、それを活用して価値を出すということなのです。

 この記事で説明したように、世界で戦うビジネスパーソンは、ただ単に海外のある国に行って、実務家として価値を出す以上に、「世界的な価値の連鎖」を活用した事業運営の手法を習得し、実践する必要があります。

 世界の複数の拠点に点在する人的・物的な資源を把握し、それをつなぎ合わせることで、つなぎ合わせければ実現できないアウトプットを生み出すこと。それができるビジネスパーソンが、真のグローバルリーダーとなり得る、と私は考えています。

 現在においてもすでに、世界規模で競争力を保つ企業の経営者の方々の多くは、それをより規模の大きな、そして高度な次元で組織的に実行することができます。数万人という人材と、数千億円という資源をもって世界中をつなげ、活用し、そして世界中で事業の成果につなげていくことができるのです。

 これは、単に海外に出ていくような「国際化」の話ではなく、世界を統合して事業を行う「グローバル統合企業」の構築を目指すことでもあります。

『領域を超える経営学』の第12章では、グローバル経営の最先端においては、価値連鎖の戦略が必須となると主張しました。

 その戦略は、全世界に点在する資源を、企業が有効活用するということを目標としています。そして、それはすなわち、私たち1人ひとりのビジネスパーソンが、世界的な価値の連鎖を活用した事業運営手法を実践し、それを磨きこんでいくことを求めるものでもあるのです。

 地球を自分の裏庭のように活用できる力を、個人としても、企業としても育成しなければならない時代が、まさに訪れていると言えるでしょう。

 そうした人材になれるかどうかが、個人として、グローバル化に対応するために考えなければならない課題です。そして、そうした人材をどれだけ惹きつけ、同時に育成できるかが、企業にとっての喫緊の経営課題となりつつあるとも言える、と私は考えています。

 さて、今回も長くなってきましたのでここらへんで。

 また次回お会いしましょう。

研究と実学、常に2つの顔を持つ経営学において、研究として経営学に貢献するとは何を意味するのか。第8回では、オックスフォード大学で学位を取得したときの経験をもとに、単に自分の考えを主張するだけではない、知の系譜としての経営学を読み解く。次回更新は、3月17日(月)を予定。


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