ベンチャー企業の経営者として実務に携わり、マッキンゼー&カンパニーのコンサルタントとして経営を俯瞰し、オックスフォード大学で学問を修めた琴坂将広氏。『領域を超える経営学』(ダイヤモンド社)の出版を記念して、新進気鋭の経営学者が、身近な事例を交えながら、経営学のおもしろさと奥深さを伝える。連載は全15回を予定。
新入社員や部下と働くときこそ敬語を使え!
突然ですが、みなさんが、真に個々人の能力を尊重し、成果を出せる人材を適切なタイミングで引き上げていける、健全な組織で働かれていると仮定しましょう。
その場合、おそらく実践して損がないのは、新入社員や部下に敬語を使うこと、少なくとも敬意を払って接するという単純なことです。非常に優秀な実務家で、出世コースをトップグループで快走しているとしても、逆に、あまり大きな実績を挙げることができていないとしても、これは実践する意味があるはずです。
間違っても、先輩風を吹かせてはいけません。立場を濫用して嫌味を言うなどもってのほかです。新入社員や部下が何をできるのか、何を言っているのか、を正確に読み取る必要があります。
そして、たとえ彼らがしていることが荒削りでも、不十分な要素があるとしても、そこに大きな可能性が見いだせるのであれば、むしろ認めて、さらには引き上げるために尽力するべきです。
それは、なぜでしょうか?
これをサポートする学術研究をよく知っているわけではありませんが(もしご存じであればお知らせください)、私がこれまで多くの経営者の方々にインタビューをさせていただいた経験から、今回は、その理由についてつらつらと書きたいと思います。