「グローバルな舞台で戦える企業に」
「途上国で受け入れられる製品づくりを」

企業がグローバル展開、特に途上国を中心としたBOP市場に出ていく必要性についての認識は広まってきた。しかし、途上国のマーケットについて、その実態を理解している企業やビジネスパーソンはどのくらいいるのだろう。
いま、そうした途上国の「真のニーズ」を知っている、あるNPOが世界中から注目を集めている。その名は、コペルニク(Kopernik)。国連、世界銀行、マサチューセッツ工科大学(MIT)だけでなく、パナソニックなどの伝統的なモノづくり企業から協業のオファーが殺到しているグローバルな組織だ。
コペルニク共同創設者で、初の著書『世界を巻き込む。』を上梓したばかりの中村俊裕氏に、日本企業がグローバルに成功するためのエッセンスを聞いていく連載の第2回となる今回は、途上国の9割の人が抱える6つのニーズについて聞いた。途上国にある「ブルー・オーシャン」をつかむために、いま何をするべきなのか。(構成:廣畑達也)

インドネシアの消費者の9割は、農村部にいる
―― ニーズを探す場所を間違えていないか?

――「BOPビジネス」が日本でも言われるようになってすでに長い時間が経っていますが、海外への進出で苦労している企業はいまだに多いと聞きます。中村さんは、何がその原因だと見ていますか?

中村 端的に言うと、「生活シーンを知らなさすぎる」という言葉に集約されます。ニーズの把握がままならないのも、製品を流通させることができないのも、結局は「その土地に暮らす人について知らないこと」がすべての原因です。

――それは企業でもリサーチしていそうなものですが……。

中村 都市部の調査であれば、うまくいっている企業もあるかもしれません。しかし、途上国の消費の大部分は、農村部です。そこまでカバーして調べきれている企業は、ほとんどないのが実情ではないでしょうか。

――農村部にこそ、巨大なマーケットがある?

中村に都市部で生活をしている年収3000ドル以上の世帯はインドネシアでも180万人、人口の1%以下にすぎません。具体的にエネルギー市場を見てみると、市場規模の約半分が、コペルニクがターゲットにしている1日3ドル以下で暮らす農村部の貧困層に集中しています。

 実際には、日本企業と連携することが増えた今でも、いまだによく聞かれる質問は、「途上国ではどういうニーズがあるんですか?」というもの。「途上国には行ったことがなく、想像もつきません」という人もいれば、「会社の意思決定が遅く、なかなか市場調査にも行けません」という人もいます。

 調査会社にお願いしたのに、見たことのあるケーススタディしか出てこない、という嘆き節を聞いたことも一度や二度ではありません。