「グローバルな舞台で戦える企業に」
「途上国で受け入れられる製品づくりを」
企業がグローバル展開、特に途上国を中心としたBOP市場にでていく必要性についての認識は広まってきた。しかし、途上国のマーケットについて、そのリアルな実態を理解している企業やビジネスパーソンはどのくらいいるのだろう。
いま、そうした途上国の「真のニーズ」を知っている、あるNPOが世界中から注目を集めている。その名は、コペルニク(Kopernik)。国連や世界銀行といった国際機関、マサチューセッツ工科大学(MIT)や慶応大学などの大学、パナソニックなどの伝統的なモノづくり企業から協業のオファーが殺到、世界中でともにプロジェクトを行っているグローバルな組織だ。
本連載では、マッキンゼー、国連を経てコペルニクを創業し、初の著書『世界を巻き込む。』を上梓したばかりの中村俊裕氏に、日本企業がグローバルに成功するためのエッセンスを聞いていく。第1回は、途上国に眠るリアルなニーズをヒントに、企業が取るべき新しい選択肢を紹介する。(構成:廣畑達也)

明かりがないと、貧乏になる!?
途上国が抱える根源的なニーズを正しく理解するには

中村「明かりがない暮らし」を想像できますか?

――明かり、ですか。以前停電があったときは、暗くて本当に不便でしたが……。

中村 日本のような先進国で聞くと、「明かりがない=暗くて不便」とイメージされる方が多いです。しかし、「暗くて不便」というのは、明かりの問題を考えるうえでは表面的な問題にすぎません。実は、明かりがない、ということは「経済的な損失」に直結します

――えっ!? 夜が暗いというだけで、貧乏になるんですか?

中村 少し乱暴ですが(笑)、そのとおりです。

僕たちコペルニクは、途上国の中でも「ラストマイル」と呼ばれる最果ての地域を「現場」として、「貧困削減」を目標に企業や国際機関、大学、そして現地のNGOとともに仕事をしています。こうした場所では、明かりがないことが「不便」だけではなくもっと深刻な問題につながってしまう、ということを直接目で見ることができます。

最近は日本企業の方々からも問い合わせをいただく機会が増えていますが、この「問題」を真摯に考えていただくと、途上国の貧困層が抱える本質的なニーズと、その大きな市場(マーケット)に至るアプローチの仕方を深く理解することができると思います。

――「明かりがない」という問題が、BOPビジネスを考えるためのヒントになると?

中村 それを理解するためにも、もうしばらくこちらから質問させてください(笑)

灯油価格は日本の2倍以上?
途上国の小さな明かりから見えてくる3つの問題

中村 このような途上国の中でも「田舎」といえる送電網が整っていない地域では、どうやって明かりをとっていると思いますか?

――うーん、電気もガスもないんですよね。それで明かりをとるには……もしかして、何かを直接燃やしているとか?

中村 惜しい。正解は、「灯油ランプ」。電気が通っていない村の人たちは、こんなふうに灯油を染み込ませた紐に火をともして、明かりをとっています。

途上国の村で使われている「灯油ランプ」

――小学校の時に理科の実験で使った、アルコールランプを思い出しました。

中村 たしかに! 彼らは、このようなランプを使って、炎を直接の光源にしています。このランプには、多くの問題とニーズについて考えるためのヒントがあります。ここから考えていきましょう。