「トイレがある」だけで解決するこれだけの問題
<課題3 安全な水がない><課題4 トイレがなく、衛生状態が悪い>
中村 途上国の映像で、頭の上に水の入った容器を乗せて運んでいるのを見たことはありますか?
――あります。女性が運んでいる映像しか見たことがありませんが……。
中村 あの仕事は、女性と子どもが朝・夕方に行う日課なんです。アジア・アフリカの女性は、1日に何度も、何時間もかけて水源まで水を汲みに行きます。1回に運ぶ水の量は10〜20リットル。
水源までの距離だけでなく、水の質も大きな問題です。透明に見えてもバクテリアだらけだったということがざらにあります。これが課題3と4の水と衛生の問題です。
日本人だと「水洗トイレ」があたりまえだが、いわゆる「ボットン便所」でさえ途上国にはあまり普及していません。昔、インドネシアで、たばこを吸いながら川でスクワットをして用を足していたおじさんを見かけたことがあります。この川の水は、下流に住む人々が飲み水を含めた生活用水として使っていました。
他にも、牛が飼われている場所の近くの水たまりから水を汲んでいるウガンダの家庭では、世界保健機関(WHO)が安全とする基準値の460倍もの有害細菌が検出されたこともあります。
――460倍とは……。やはり健康被害も多いのでしょうか?
中村 残念ながら、汚い水を飲み、下痢による脱水症状で死亡する子どもの数は、1日4000人を超えています。この問題は、特に途上国の農村部で非常に深刻です。依然として、世界の人口の11%にあたる7.8億人の人たちは安全な水へのアクセスがなく、トイレがなく衛生状態の悪い人は、25億人もいます。
裏を返せば、水と衛生に関するニーズを抱えている人は、これだけいるということになります。トイレと水の問題は密接に関係しており、これらの問題を解決することで、これだけの数の人の課題を解決できるのです。