景気悪化で消費意欲が急減し、小売り各社が軒並み不調にあえぐなか、業績絶好調の企業がある。

 東証一部上場の自転車専門販売店、あさひである。

 2008年8月中間決算は、売上高117億円(前年同期比22.5%増)、営業利益18億円(同55%増)、純利益9億6000万円(同52.7%増)となった。

 快進撃の秘密は、ガソリン高や健康志向で自転車の魅力が見直されていることに加え、同社が業界唯一の製造・物流・販売の一貫体制を確立している点にある。“自転車SPA(製造小売り)”といわれるゆえんだ。中国で委託製造した自社ブランド製品は売上高の53.7%に上る。

 関東以西に159店舗を持ち、大量生産によるスケールメリットを生かす。今中間期は粗利益率50.3%(前年同期47.9%)で、SPAの先駆者、衣料品専門店のユニクロと同水準。販売管理費比率も34.8%(同35.6%)と抑えられており、営業利益率は15.5%(同12.2%)だ。

 中間期の時点で通期の利益計画をほぼ達成。下期も好調で、既存店売上高は9月までの累計で前年比8.9%増。業績の大幅な上方修正の可能性は高い。

 さらなる景気悪化でも、「郊外の大量閉店でいい物件が出るし、リストラで優秀な人材も流出する。うちにとってはプラス」と下田進社長は顔を綻ばす。

 現在の自転車販売業界の市場規模は約2500億円で、同社のシェアはまだ10%にも満たない。今後5年で350店舗程度の出店を見込んでおり、シェア拡大の余地は大きい。2000年前半に伸びたユニクロ同様に、不況期の成熟産業こそ、ビジネスのやり方次第で成長が可能という典型になりつつある。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 片田江康男 )