自分だけが経験するような不幸なことはない

白木 前回の留学話でもそうですが、美冬さんはネガティブな要素をポジティブ思考に変換することが得意ですよね。嫌なことがあったとき、どういう捉え方をしていますか? たとえば、ネット上でつらい言葉を投げかけられたときとか。

安藤美冬(あんどうみふゆ)
起業家/コラムニスト/Japan in Depth副編集長/多摩大学経営情報学部非常勤講師 株式会社スプリー代表。1980年生まれ、東京育ち。慶応義塾大学卒業後、集英社を経て現職。ソーシャルメディアでの発信を駆使し、肩書や専門領域にとらわれずに多種多様な仕事を手がける独自のノマドワーク&ライフスタイル実践者。『自分をつくる学校』学長、講談社『ミスiD(アイドル)2014』選考委員、雑誌『DRESS』の「女の内閣」働き方担当相などを務めるほか、商品企画、コラム執筆、イベント出演など幅広く活動中。多摩大学経営情報学部「SNS社会論」非常勤講師。Japan in Depth副編集長。TBS系列『情熱大陸』、NHK Eテレ『ニッポンのジレンマ』などメディア出演多数。著書に7万部突破の『冒険に出よう』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。
公式ホームページ:http://andomifuyu.com

安藤 意外と、ネット上でいろいろ言われても落ち込まないんですよ。もちろん、最初の頃は見知らぬ人から悪口を言われるなんて初めての経験にびっくりして、かなり落ち込んだこともありましたけどね。……たとえば、夏子さん、初対面の人に突然「この卑怯者!」って言われて落ち込みますか?

白木 ……落ち込まないですね。まったく。不思議です。

安藤 そうですよね。何か言われて傷つくのは、身に覚えがあるからだと思うんです。自分自身が自分のことを心のどこかで「私は卑怯者だ」と感じているから、人の言葉を真に受けてしまう。

白木 自分が自信を持って「そうじゃない」と思えれば、それでいい、と。

安藤 はい。自分が自分を「卑怯者」だなんて微塵も思っていなければ、悪口を「受け取らない」という選択ができます。それに、チャンレンジし続けている仲間や尊敬する方々に会えば、すぐに嫌な気持ちが消えて、心が凪の状態に戻ることもわかってきた。だから、なるべくそういう仲間たちと一緒にいるようにしています。

白木 一緒にいる人をはじめ、自分のいる環境を整えるということはとても大切ですよね。

安藤 夏子さんは落ち込んだとき、どうされていますか?

白木 まず、「先人に学ぶ」ということを意識します。飲み込まれてしまいそうな高い波を目の前にしたら、「みんな経験していることだ」と開き直ってしまうんです。私が悩むことなんて、誰かが経験して、そして解決しているはず、と。歴史の中で自分にだけ降り掛かる問題って、なかなか起こらないですよね。

安藤 たしかに。

白木 たとえば、稲盛和夫さんの『生き方』(サンマーク出版)という本の中に、あるとき、社員が全員辞めてしまったというショッキングな事件が記されています。私だったら、もう、卒倒してしまうと思うのですが(笑)。

安藤 うーん、想像できないですね、そんな状況。

白木 あの歴史に名を残す経営者である稲盛さんですら、こんなにとんでもない波を経験している。私が抱えている問題なんてほんの小波だ、乗り越えられないはずはない、と思って……あとは頑張ります。そう開き直れるという意味でも、ノウハウや解決策があるという意味でも、やっぱり先人の存在ってすごく偉大なんです。

安藤 たいていの問題はだれかが経験して解決しているという考え方、気持ちがラクになりますね。まったくまっさらな道って、実はなかなかないのかもしれません。