中国の人件費の上昇に伴い、より安いミャンマーへの工場移転を考える動きが増えてきている。中国より安価な工員の賃金レベルは確かに魅力的だ。一方で、ミャンマーにおいては、インフラ面の未整備をはじめとしたコスト上昇要因も存在する。結果として、中国からミャンマーに製造拠点を移すことは、どの程度メリットがあるのだろうか。逆に、ミャンマーでコスト削減効果を実現できるような生産品目とは、どのような品目なのだろうか。

 今回ご紹介するのは、2012年4月からミャンマーで縫製業及びプラスチックの成型を中心とした、軽工業品の製造を行っているゴールデンバーグ社だ。中国での経験をもとにミャンマーに乗り込み、現地のリスクにさらされながらも、今まで事業を展開してきた。その進出に至る経緯や考え方は、まさに大胆果敢な華僑系企業の進出プロセスだ。彼らの進出のケースから、ミャンマー進出のコスト削減効果を見ていきたい。

社長の金沢氏は、単身中国に乗り込み
徒手空拳で工場を立ち上げた

 新たに海外に進出する際には、その国での可能性やリスクについて、なるべく詳細な情報を集め、その内容を検討し進出の是非の判断を下す。ミャンマーをこのような一般的な検討プロセスから製造業の進出先として見た場合、今まではまだインフラや部品の供給網の貧弱さなどから、進出のタイミングではないとの結論に至るケースが多かった。

 その結果、製造業でのミャンマー進出は、今のところ製造委託型の縫製業等を除くと、それほど多く進んではいない。

 前回ご紹介したが、その理由を改めてまとめてみよう。

1 インフラが未整備であること
2 法制が未整備であること
3 投資先国の情報不足
4 法制の運用が不透明
5 管理職クラスの人材確保が困難
6 治安・社会情勢が不安

 一方で、このような環境下であるにもかかわらず、ミャンマー進出を選択し、既に実行に移している企業も存在する。これらの企業は、上記の問題点に対してどのように向き合っているのだろうか。