今年の女子サッカー・なでしこリーグは、ちょっとした異変が起こっている。
昨年までの3年間はINAC神戸の天下だった。リーグ戦も、男子の天皇杯に当たる皇后杯も3連覇。その勝ち方も圧倒的だ。2011年のリーグ戦は16戦13勝0敗3分、2012年は18戦17勝0敗1分、2013年は18戦16勝2敗。3年間で2敗しかしておらず、勝率は9割近い。実力差がつきにくく、どんなに強くても取りこぼしがあるサッカーで、この成績は驚異的だ。また、昨年の国際女子サッカークラブ選手権ではヨーロッパ王者のチェルシーを下して優勝。世界一強い女子サッカークラブの称号を得たわけだ。
ところが今季は開幕から浦和、ベガルタ仙台を相手に連敗スタート。4節を終えた時点で1勝2敗1分の7位(10チーム中)と低迷している。
INAC神戸は2011年の女子ワールドカップで優勝した日本女子代表なでしこジャパンに7人もの選手を送り込んだタレント軍団だ。澤穂希、大野忍、川澄奈穂美、近賀ゆかり、海堀あゆみは代表の主力として活躍。世界レベルの才能の結集が圧倒的な強さにつながったといえる。
ここから大野がフランスのオリンピック・リヨン(現在は英国・アーセナル)、サブだった田中明日菜はドイツ・フランクフルトに移籍、今季開幕前には近賀がアーセナルに移籍、川澄も米国・シアトル・レインに期限付き移籍で抜けたが、澤や海堀、サブFWだった高瀬愛実は健在だ。また、世代交代期に備えて高校女子サッカー界のスター、京川舞、仲田歩夢らが加入し、INAC神戸の黄金時代は続くと思われた。ところが、開幕で思わぬつまずきを見せてしまったのだ。
不安要素はなかったわけではない。監督が前田浩二氏に交代したことだ。前田氏は2012年にJ2福岡、2013年に鳥取の監督を務めたが、不成績で解任された。INAC神戸の監督に就任するまで、なんと公式戦26連敗という監督としては不名誉な記録を更新中だったのだ。それは開幕からの連敗で28に伸びたが、3節の新潟戦に勝利してストップ。しかし、20日の湯郷ベル戦は1-1と引分け。昨年までの強さは影を潜めているのは監督に問題があるのではないか、という声も出始めている。