経営学はどのような未来に向かうのか?

『領域を超える経営学』の終章では、「経営学の未来とは」と題して、経営学の未来に用意された4つのシナリオを示しています。

 私のような若い研究者が、経営学の未来を語るのはおこがましいと思われるかとも考えました。しかし、研究の世界は「誰が言ったのかではなく、何を言ったのか」の世界であると信じて、あえて主張をさせていただきました。

 経営学の未来も、国際経営の未来と同様に、すでに見えてきている未来と、まだ不明瞭な未来の2つが混在しています。

 このような状況においては、すでに述べたように、その可能性の幅を理解すると同時に、いますべきことは何か、何に対して留意すべきなのかを明確に理解し、それに基づいて行動を起こすことが必要となります。

 本書を執筆する動機となったのは、より深く、より広く、厳密な社会科学としての経営学の姿をお伝えしたいという想いでした。同時に、哲学や考古学の要素をも含み、広範であり、あやふやでもあり、試行錯誤を続ける実践科学としての経営学の姿をより多くの方々にお伝えすることが、私が理想とするシナリオである「理想の経営学の未来」に資する「いますべきこと」であると考えたためでもあります。

 この連載は今回で1つの区切りを迎えます。しかし私は、これからも1人の研究者として、昼夜を惜しまず、経営学という学問分野の更なる進化を目指して、研鑽を続けていきたいと思います。そして、近視眼的な研究成果ではなく、根源的で、本質的な研究成果を世界に問うことができるように、妥協のない研究生活を続けていきたいと、切に願っています。

 長い間、お読みいただき、ありがとうございました。ふたたびお会いできることを楽しみにしています。

 では、また。

 ※1 Franklin, Daniel., and Andrews, John., eds. 2012. The Economist: Megachange: The World in 2050. Profile Books.(『2050年の世界』船橋洋一解説、東江一紀・峯村利哉訳、文藝春秋、2012年)
 ※2 The National Intelligence Council’s. “Global Trends 2030: Alternative Worlds.”, the Office of the Director of National Intelligence, http://www.dni.gov/index.php/about/organization/national-intelligence-council-global-trends, (accessed 2013-12-25).(『2030年 世界はこう変わる——アメリカ情報機関が分析した「17年後の未来」』谷町真珠訳、講談社、2013年)
 ※3 Van Der Heijden, Kees. 1996. Scenarios: The Art of Strategic Conversation. John Wiley & Sons.(『シナリオ・プ ランニング』西村行功訳、グロービス監訳、ダイヤモンド社、1998年)
 *4 DHL. “Delivering Tomorrow.”, http://www.dpdhl.com/en/logistics_around_us/delivering_tomorrow_
logistics_2050.html,(accessed 2013-12-25).
 *5 Wärtsilä. “Shipping Scenarios 2030.”, http://www.shippingscenarios.wartsila.com/,(accessed 2013-12-25).
 ※6 Wade, Woody. 2012. Scenario Planning: A Field Guide to the Future. Wiley. (『シナリオ・プランニング——未来を描き、創造する』野村恭彦監訳、関美和訳、英治出版、2013年)


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『領域を超える経営学——グローバル経営の本質を「知の系譜」で読み解く』(琴坂将広 

マッキンゼー×オックスフォード大学Ph.D.×経営者、3つの異なる視点で解き明かす最先端の経営学。紀元前3500年まで遡る知の源流から最新理論まで、この1冊でグローバル経営のすべてがわかる。国家の領域、学問領域を超える経営学が示す、世界の未来とは。

 


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