決め打ちで未来を予測するのはリスクがある

 いまよりも経済が単純だった時代、つまり、商品が単純で、流通路が単純で、取引への参加者数が限られていた時代であれば、ある一定の法則性で市場の動向が変化していくと予測することは、現代よりも容易だったのかもしれません。

 もちろん、現代においても、人口が今後どのように推移するか、経済成長の方向性がどうなるのか、技術進化の長期的なトレンドの行方など、全般的な方向性を予測できる未来も存在します。

 たとえば、『エコノミスト』が2012年3月に出版した『Megachange』(*1)は、医療技術の進歩、経済成長による女性の社会進出、SNSの発展、英語一極支配の継続、宗教の後退、中国の軍事的台頭、テロの脅威、世界的な高齢化、宇宙開発の進展について、2050年までの「大きな変化」として予測します。

 また、NIC(アメリカ国家情報会議)が2012年12月に発表した「Global Trends 2030」(*2)は、個人の力の増大、新興国の台頭、地域紛争の可能性、人口構成の変化、食料と水とエネルギーの問題、世界経済の不安定化、大国の対立を予測しています。

 こうしたマクロレベルでの大きな方向性は、たしかに比較的確度の高い未来だと言えます。しかしもちろん、こうしたマクロレベルでの可能性ですら、突発的な事件・事故や、特定の力ある人間の意思の力で左右され得ることも事実です。

 たとえば、1980年代前半に、日本が世界を支配するほどの経済成長を続けると予測した人がいるように、また70年代後半に、石油資源が数十年で枯渇すると予測した人がいるように、いわゆる「決め打ち」で外部環境の変化を予測することは、実際のところ大きなリスクを抱えているのです。