“恩返し”と“見栄”の就活が
現在の就活難を生み出している

前回、大学生の多くが「就職しなくてはいけない」という“責任感”と「時期が来たから仕方なく将来を考え始めた」という“親が考えているほど、深く考えていない”状況から就職活動を行っているとお話しした。また、このような価値観が求人市場に大きな“歪み”を生じさせているのも事実である。

 まず、“責任感”は子どもに対してプレッシャーとなって襲いかかる。

「このレベルの大学に行ったんだから、このくらいの企業には就職しないとかっこ悪い」

「せっかく大学まで行かせてもらったんだから、有名な企業に就職したい」

 このように、自分のための就活ではなく、親や周囲の人たちへの“恩返し”や“見栄”が働いてしまい、有名企業、大企業ばかりを受けて、その結果、ことごとく不採用になり、自信を喪失していってしまうのである。

 現実問題として、“就職難”は、大企業だけに発生している現象である。

 2014年度の300人未満の企業の求人倍率は3.26倍、つまり、求人者1人に対して、3.26社の求人が来ていることになる。しかし、5000人以上の企業の場合、求人倍率は0.54倍となっており、求職者2人に対して、ようやく1社の企業の就職先があるような厳しい状況になっている。

2014年度 大卒求人倍率調査(リクルートワークス調べ)

 つまり、多くの学生が、自分の大学や能力のレベルに関係なく「大企業志向」「安定志向」の意識を強く持っており、自ら厳しい就職戦線に果敢に挑んでしまっているのである。しかも、この大企業と中小企業の求人倍率の格差は、1997年の求人倍率の調査が始まった頃から、ほとんど格差が埋まっていない。