沢井はひと息ついて、タバコに火をつけた。

「二番目は、その下の管理職の人たちについてですが、この人たちは個別にこの部屋で、面談してみたい。

 仕事の合い間に一人ずつということで、全員が終わるのはかなり時間がかかると思うけれど、どんなに時間がかかろうと、部長から係長代理まで全員と面談をしていきたい。

 三番目に、その下の監督者以下の作業員だが、これは私が現場を巡回して、そのなかで立ち話でよいから個別に話し合ってみたい。

 ついてはおとといの巡回で気がついたのだが、多くの人が安全帽と防塵眼鏡とマスクで顔が見えない。おまけに安全帽の側面に書いてある名前が汚れたり、消えたりでほとんど読めない。

 これも藤村君にお願いしたいんだが、全員の安全帽の名前をもっと大きく、私が背後からでも名前を呼びかけられるように、ハッキリ書き直させてもらいたい。これは至急お願いしたい」

「わかりました。すぐやります」

「社長が現場を巡回されるときは、今までは各現場の課長がご案内するようになっていますが……」
「岡田さん。それはやめてください。それでは私の巡回の目的は達成できません。私は一人で歩きたいのです」

「わかりました。ただ二点ばかり気になることがあります。一つは安全面です。まだ当社の仕事をほとんどご存知にならない社長が一人で歩かれて、万一のことがあると、と心配です。

 第二の点は、お一人で歩かれると作業員のなかから直訴する者が出たり、それを中間管理者が気にしたりしますが」