信頼回復のための3つの施策

「お話をうかがって、今、私は身を切られる思いです。この会社に拾っていただいてやがて20年になりますが、その間歴代の社長に仕えてきました。

 そして今私は常務です。いくら社長が上にいるとはいえ、いったい私は何をしてきたのか。いろいろな疑問や不満やそして時には抵抗を感じながらも、結局ほとんど妥協してきたことを、お話をうかがいながら痛感いたしました。

 20年という年月のなかで、私もいつの間にか惰性に流され、見るべきものが見えなくなっていたのです」

「岡田さん。20年前、親会社であなたが何をしたか、私は話を聞いています。あなたなら、私の気持ちは必ずわかってくれると思っていました。

 だから、赴任早々最初の話し合いに入ってもらったのです。ともかくも、私と岡田さん、藤村君、この三人がゴタゴタしていたら何もできません。
 まず三人が固まって、そこからいろいろ始めてみたい。協力してくれますね」

「もちろんです」
「藤村君も」
「おっしゃるまでもありません」

「よし、それで決まった。ところで、当面私は、社員たちと直接接触することから始めたいと思っています。前からいろいろ考えていたのですが、具体的に3つの方法をとりたいのです。

 その第一は、部長会議です。定例の金曜日の会議以外に、少なくとも週に一、二回、臨時に部長会議を開いて話し合いをしたい。

 テーマは当社の組織のあり方についてです。
 組織の形だけではなく、代理職が大勢いたり、管理職が多すぎる。人の問題も含めていろいろ議論をしてみたい。

 そのプロセスで、部長会議のメンバーの人びとについて知り、私のこともその人びとに知ってもらいたい。
 部長会議の事務局は総務部になっているようだから、藤村君、ひとつお世話してください」