「第一の点は、十分注意して事故が起こらないようにします。
 第二の点は直訴でも何でも話が出れば聞きます。しかし、直接取り上げることはしません。必ずお二人に相談します。原則的には直訴は取り上げないほうがいいと思っています」

「わかりました。何しろ、初めてのことですから、やってみないとわかりません。ともかくも、おやりになってください」

「ありがとう。当面この三つに精力を注ぎます。その間、ルーティン的なことで決定を要することや、こちらから積極的に手を打たねばならないことなどいろいろ出てくるでしょうが、これについては岡田さん、全面的にバックアップしてください」

「ハイ、やらせていただきます」

「お願いします。最後にお二人にお願いがあります。
 岡田さんも藤村君も真面目で、そして自分で言うのもなんですが、私も真面目なほうです。トップの三人がみんな真面目でコチコチ人間では、下の者はたまったもんじゃない。ひとつ気楽に明るくやっていきましょうや」
「ハイ」

 岡田と藤村が、そろって真面目に返事をした。

「うーん、その真面目なところがいかんのだよ」
「そう急に言われても……」
「弱りましたな……」
「ハハハ……。ま、だんだんとやりましょう」(第7回へつづく


<書籍のご案内>

【プロローグから第1章までを公開!(6)】<br />浮かび上がってきた<br />ひとつの課題と3つの施策

『黒字化せよ! 出向社長最後の勝負』

実話をもとにした迫真のストーリー!
人が燃え組織が燃える! マネジメントの記録

■ストーリー■
大企業で役員目前だった沢井は、ある日突然、出向を言い渡される。出向先は万年赤字の問題子会社。辞令にショックを受けつつも、1年以内に黒字化することを決意した沢井だが、状況は想像以上に悪かった。やる気のない社員、乱雑で老朽化の進む職場…。しかし、新しく人を雇ったり設備投資をするような予算はない。今ある人材、今ある設備で黒字化できるのか。(本書は、『黒字浮上! 最終指令』〈小社刊・1991年〉を改題・改訂したものです)

【目次】
♦プロローグ  出向内示 ──黒字化せよ、さもなくば清算だ
♦第1章 赴任【7月】 ──あきらめきった無気力な社員たち
♦第2章 「オレがやる、協力する、明るくする」【8月】 ──改革が始まる
♦第3章 本音のコミュニケーションとストローク【9月】 ──社員の士気を高める方法
♦第4章 会社は社員とその家族の幸せのためにある【10月】 ──沢井社長の経営哲学
♦第5章 がむしゃらに頑張って何トンできる?【11月】 ──瞬間最大風速をつかめ!
♦第6章 赤字の正体【12月】 ──絶望の先に答えがある
♦第7章 新しい年、新しい社章【1月】 ──三か年計画の発表
♦第8章 ベテラン社員、ついに動く【2月】 ──組織が生まれ変わるとき
♦第9章 月産200トン体制に向けて【3月】 ──人が燃え、組織が動く
♦第10章 黒字浮上【4月】 ──人はみな能力を秘めている
♦エピローグ 黒字達成までをふり返る ──同時並行多面作戦の展開

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