以前はよく、「一戸あたり3000円の販促費をかけて3ヵ月の契約がとれればペイする」と言われていた。ところが、最近では「8~9ヵ月は続かないとペイしない」。それだけ、かかる販促費も増えているからだ。

 高齢化は追い風にもなれば、逆風にもなる。

「年金生活の方はこれまで比較的長くとってくれるいいお客さんでもありました。でも、今はそうとも言いきれなくて。年金生活になったから生活も不安だし、牛乳をとるのをやめるわ、という方の方が多いんです。それに……」

「それに?」

「いったんホームに入ってしまうと、なかなか自宅には戻ってこない方もいらっしゃったり……」

 過疎化も進むなか、以前と同じ契約数を維持しようと思えばエリアを拡大するしかないのだが、エリアを拡大すれば、それだけかかるコストも増えて配達が非効率になる。やみくもに顧客を増やしても、利益が増えなければ、自分で自分の首を締めるだけの結果にもなりかねない。ニーズはあっても、利益を伴わなければ事業者は参入できないのだ。

消費者が意外と知らない
メーカーと牛乳販売店の裏事情

「お年寄りの場合、夏場と冬場は入院する方も多いんです。だから、その間はどうしても配達がお休みになってしまう」

 夏場に配達をしていると、木陰で休んでいる人をよく見かける。「大丈夫かしら?」と思えるほど、ぐったりしていることもある。

「私たちはまだ車だし、クーラーもあるからいいんです。でも、バイクで配る郵便配達員の方たちとかは、大変だと思いますよ。炎天下に日よけもなく、クーラーもない訳ですから」

 夏場は商品の安全・衛生にもとりわけ気を遣う。

「週2回だと、取り忘れているお宅も出てきますしね」

「そんな時は、どうするんですか?」

「商品が痛んでいる場合は、取り忘れておられたのでこちらで処分させていただきますというお手紙を入れます」

「そうでない場合は?」

「勝手に持って帰ってしまう訳にもいかないので、新しいものと区別できるようにして、置いておきます」