「政治混乱が収まるまでタイ向け投資は様子見だ」。筆者が最近、日本各地で訪問した企業からはそんな声が聞かれた。投資を手控える動きが広がっている。

 一方、筆者が3月末にバンコクで面会した複数の日本企業関係者は「バンコクはビジネス戦略上、不可欠の拠点」と異口同音に述べていた。

 タイには高度な産業蓄積による資材調達の容易さや、高度人材の存在などの強みがある。来年に妥結を控える東アジア包括経済連携とASEAN経済共同体の発足もプラスに働くとの期待も高かった。

 あるタイ政府関係者は「ベトナムなど後発国が数年でタイに追い付くのは難しく、まだ比較優位がある。しかし、政治混乱が繰り返されれば外国人は愛想を尽かし、投資が他国へ逃げるかもしれない」と将来への懸念を隠さず、筆者は、日本企業はタイをどう捉えているのかと質問攻めに遭った。

総選挙でつまずけば
国王による介入か無血クーデターも

 今後、タイ政治はどこに向かうのか。まずは7月20日に予定されている総選挙に注目だ。選挙が円滑に実施されれば、9月末ごろに議会が招集され10月に新政権が発足する。しかし民主党によるボイコットやPDRCが選挙妨害を行えば、憲法裁は再び選挙無効の判決を下すだろう。そうすると政治は機能不全に陥り、事態打開には国王が介入して適切な人物を暫定首相に任命し臨時政権を発足させるしかない。その手段には軍による無血クーデターも含まれる。

 ただし、世論では、国王による介入は最終手段である上にクーデターに対しては否定的であり、可能な限り議会制民主主義の枠内で解決されることが望ましいとの声が多い。そのため、現在、上院や選挙管理委員会は解決策を議論しており、それが有効に機能するかが焦点となる。

 ただ、与野党の隔たりは大きく、タイ貢献党は選挙を優先する一方、民主党とPDRCは先に中立的な暫定政権を樹立して政治改革を行った上で総選挙を実施すべきだと主張している。与野党間で妥協が成立して再選挙が行われるか、もしくは妥協が成立せず政治が膠着して国王が介入するか。いずれにせよ、年内をめどに少なくとも表面上は収束へと向かうだろう。ただ、政情不安が再発する懸念は拭えない。政治対立の根本原因が残されたままだからだ。