東北大AIMRエントランス。外壁は、明治時代に建造された時のものがそのまま使用されている
Photo by Y.M.

 ちなみに東北大AIMRが研究者に支払う報酬は独自に決定することができ、「海外の研究機関との獲得競争に負けないだけの報酬を支払うことも可能です」(小谷氏)。その報酬の根拠となるのは、研究実績と将来性だ。完全に職業能力だけで評価される、極めてシビアな世界ではある。しかし小谷氏は、

「東北大AIMRにとっての『優秀な研究者』とは、ハイリスクでも新しいことにチャレンジしたい人です。自分がいなければできなかったことを残したい、何かを変えたい、と思うような人です。とにかく、新しいことに挑んでほしいと思っています。研究の能力だけではなく、他分野の人と話しあったり協力したりしながらやっていけるかどうかも大切です。特にAIMRは、明確な研究ミッションがあり、プロジェクトを遂行していきますから。そのプロジェクトにふさわしい能力を持っているかどうかを見るためにも、面接は重視しています」

 という。このような人々にとっては、能力と成果で評価されることこそが、むしろ望ましいことなのかもしれない。

 しかし小谷氏は、声のトーンを少し柔らかくして続ける。

「さっき『ハイリスク』と言いましたけど、実は、そうではありません。100%の成功はしないかもしれません。最初に思い描いた通りの方向には進めないかもしれません。でも、挑戦的な研究とはそういうものです。我々の求める『優秀な』研究者とは、たとえ当初の計画とは違う方向に進んだとしても、別の新しい何か、テーマや研究の種を見つける能力を持った人なのです……せっかくなら、楽しく、研究に挑戦してほしいと願っています」(小谷氏)

意思決定迅速化のため教授会もなし
徹底したトップダウン体制

 小谷氏の毎日には、数多くの業務が含まれている。東北大AIMR機構長・東北大大学院理学研究科教授という二つの立場。機構マネジメントと教育・研究に加え、東北大学副理事(研究担当)として大学全体の研究戦略の立案・遂行にも関わる。さらに、3月より総合科学技術会議の有識者議員として、国の科学技術政策にも貢献している。

 

小谷氏の語り口は極めてシャープで明快だ。問いかけに対する一つ一つの応答が、短い時間の間に考えつくされて発される感じだ
東北大AIMR提供

「これらの業務が、毎日違うウエイトになっています」(小谷氏)

 ある1日は、午前中に会議、午後は学生とセミナー、夜は自分自身の研究と機構長としての業務。会議・学会で出張する日も多い。

「1週間あたり70時間くらいは大学にいます。うち20時間はセミナーです。研究室では、指導しているポストドクターの発表を聞いたり、自分が発表したりもします。加えてAIMRは、材料科学と数学の異分野融合がミッションですから、研究者たちのセミナーが多いのも特徴です。そのセミナーに数学者として出席し、材料科学との融合研究の種がないか探しています」(小谷氏)