お客様相談室のマネジャーはどう判断したか?
お客様相談室のマネジャーである菅原博之は、数日前に店長から連絡を受けていた。
「菅原さん、ねちっこいお客様に手を焼いています。毎週土曜日に来店して、『まだセールはやらないのか』とか、『店員の態度が冷たい』などと文句を言っています。ほかのお客様の手前もあって、ほとほと困っているんです。先日もそのお客様と話したんですが、ラチが明かないので『本部の責任者に会わせる』と言ってしまいました」
「嫌がらせは、いつからなんですか?」
菅原は〈そろそろ、自分の出番かな〉と思いながら、これまでの経緯を尋ねた。
「じつは3ヵ月前、そのお客様が当店でカジュアルスーツを購入されました。その際、裾上げが1センチほど違っていたのです。というか、お客様からそのような申し出がありました。それが発端ですね」
「その一件は片付いたんですか?」
「それが微妙なんです。裾上げはすぐにやり直して、お客様にもご了解いただいたんですが、品物を渡したときに『これで、終わりってこと?』と不服そうでした。帰り際には『こんどはサービスしてよ』と、捨てゼリフのように言われました」
菅原は、その男性客――須藤が常習クレーマーだと直感した。そこで、須藤が来店するはずの土曜日に店舗で待機した。