「いつも来ているから大丈夫。連絡先なら、携帯電話を教えてある」

 菅原は、相手の出方を待った。しばしの沈黙。そして須藤が口を開く。

「せっかく、本部のマネジャーさんにお会いできたんだから、この際、きちんと謝罪してもらいたいんだけど……」

「と、おっしゃいますと?」

 菅原はとぼけて尋ねた。

「裾直しのとき、こんどサービスしてくれると言ってたでしょ」

 菅原は、「捨てゼリフ」のことを指しているのはわかっていたが、あえて触れない。

「サービスとおっしゃいますと?」
 「それは、そちらで考えることでしょう」
 「具体的には、どのようなことでしょうか?」

 こんどは、須藤が苛立ってきた。

「ちょっと考えてみてよ。裾直しでミスって、セールの約束も守らない。店員の態度は最悪。こんな店、世の中にそんなにないよ」

「申し訳ございません。今後、従業員教育を含めてサービスの向上に努めて参ります」

「そんなありきたりな言葉で、僕が納得すると思う?」

 じわじわと緊張が高まる。そして突然、須藤が声を荒げた。

「ネットで流すぞ!」