大手生保の第一生命保険が5882億円もの巨費を投じ、米生保プロテクティブ生命保険を買収する。上場以来の“悲願”だったこの買収劇は他の大手生保の今後にも影響を与えそうだ。

2010年4月、大手生保としては初となる株式会社化と上場を行った第一生命保険
Photo:JIJI

「日本の保険業界は、これまで米国の圧力に屈してきた。第一生命の米国生保の買収は、それに一矢報いたようなものだ」(当局関係者)

 6月4日、第一生命保険が保険業界では史上最高額となる約5882億円の巨費を投じ、米中堅生保プロテクティブ生命保険を買収すると発表した。2010年に株式上場して以来の“悲願”達成となる。だが事は第一だけにとどまらず、これまで米国に抑圧されてきた保険業界の思いや、ライバル生保たちに対する圧力など、さまざまな波紋を呼んでいる。

 というのも、かつて日本の保険業界では、単品の医療保険など第三分野を米大手保険AIGグループやアフラックなど外資が独占し、国内勢は参入が規制されるといういびつな状態にあった。1990年代に保険業法改正を含む自由化の機運が高まった際、参入規制を撤廃しかけたが、米国政府が横やりを入れてきたのだ。

 理由は明白で、米系生保の独壇場だった第三分野の競争激化を防ぐために他ならない。

 さらに、昨年のTPP(環太平洋経済連携協定)の協議でも保険が焦点となった。これも米系生保を守るため、かんぽ生命保険独自のがん保険など新規業務に待ったをかけたのだ。揚げ句、日本郵政は1000の郵便局で扱っていたアフラックのがん保険を全国2万の郵便局での取り扱いに拡大する一方、日系生保は袖にされた。