日本製鉄によるUSスチール買収成立、日米双方に生まれるメリットとは?【池上彰・増田ユリヤ】2025年5月30日、米東部ペンシルベニア州ピッツバーグ近郊にある米鉄鋼大手USスチールのアーヴィン工場で壇上に立つトランプ米大統領(右) Photo:AFP=JIJI

日本製鉄による
USスチール買収成立

増田 トランプ米政権発足から半年が過ぎ、大統領選挙のさなかから懸案だった日本製鉄の米USスチール買収は何とか成立に至りました。

池上 米政府、つまりトランプ政権との合意が成立したことで、日本製鉄はUSスチールの全ての株を約2兆円で買い上げ、完全子会社化することが決まりました。

増田 「『US』を冠する米国の企業に対する買収は認められない」と強硬な姿勢を見せてきたトランプ氏が、一転して買収を認めたのはなぜでしょうか。

「黄金株」という名前が
気に入ったといううわさも

池上 日本製鉄が米政府に「黄金株」を持たせるとしたことが勝因でした。トランプ氏が気にしていたのは、合意後も米政府がUSスチールをコントロールできるか否かの点でした。そこで日本製鉄は完全子会社化の後も米政府がUSスチールに関する重要事項に関しては拒否する権利を持つという黄金株を保有させるとしたのです。

増田 米大統領が議会に対して持っている拒否権と似ていますね。

池上 黄金株はノーを突き付けられる、基本的にはブレーキをかけられるだけの機能ではありますが、買収時点での条件を日本製鉄が変えようとした場合にはこれを拒否することができるのです。例えば社名を変える、本社を移転するなどの場合です。ただ、トランプ氏にとっては中身以上に黄金株という名前が気に入ったのではないかともうわさされています。トランプ氏は黄金が大好きですから。