だが、それでも株価への反応は鈍く、株式時価総額は上場時の約1.6兆円を下回る約1.5兆円にとどまる。この株価について心境を如実に表したのが、5月23日に行われた決算・経営説明会での渡邉社長の発言だった。生保の企業価値を表すエンベディッド・バリュー(EV)についてだ。

「約2.8兆円だった上場時のEVは、4年間の経営努力で1.5兆円増え、14年3月期末には約4.3兆円にまで増加した。だが、当社の株式時価総額はこの増えた分ぐらいしかない……」

 つまり、第一の株価は過小評価されているというわけだ。それ故、何が何でも規模の大きな欧米生保の買収が必要だったのだ。

 今回買収したプロテクティブは米南部アラバマ州に本拠地を置く生保で、100年超の歴史の中で47件もの企業買収を繰り返して成長してきた。買収後も現経営陣を留任させることで、事業拡大をもくろんでいる。もっとも、プロテクティブの経営陣をいかにマネジメントしていくかなど、新たな課題が山積しているといえる。

 さらに第一の巨額買収はライバル生保たちの先行きにも影響を与えかねない。それは、日本生命保険や明治安田生命保険、住友生命保険といった相互会社形態の大手生保の今後の動向だ。というのも、第一と同じく営業職員チャネルが主力であるこれら大手生保も、国内市場が緩やかに減退していく構図は同じだからだ。

 とはいえ、制度上、公募増資など市場からの調達が機動的に行えない相互会社が買収に動くには、内部留保を使うしかない。だが、保険契約者が社員となる相互会社は、買収などに投じる資金があれば契約者に還元すべき、との圧力が働く。つまり、大型買収など成長戦略を描きにくい形態なのだ。

 しかも、第一が株転した際には、保険契約者821万人のうち約740万人に対し、総額1.4兆円が内部留保の貢献度合いに応じて株式や現金で割り当てられた。契約者からすれば突如降って湧いた“お小遣い”であり、「契約者から喜ばれ、解約などの抑制につながった」(第一幹部)という。

 むろん、日生や明治安田、住友が株転しても第一と同様のことが起こる。とりわけ日生や明治安田は第一よりも内部留保が手厚いため、第一をはるかに上回る規模の割り当てが行われることになる。さらに、逆ざやを解消した生保が相次いでおり、成長戦略がまたぞろ議論の俎上に載せられそうな気配が高まる中、7月に行われる総代会では、契約者から株転を求める声が上がるかもしれない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 藤田章夫)