だからこそ、ブランドストーリーを創るに当たっては、企業の意思(現状の事業の強みや、今後の事業計画等)、競合差別性(現状の競合だけではなく、将来の競合も含めて)、顧客インサイト(現状の顧客だけではなく将来の顧客も含めて。現状のニーズだけではなく今後のアンメットニーズも含めて)の3点から、ブランドの目指す姿を描きながら、創り上げることが必要だ。

 グローバルのリーディングブランドがポートフォリオ管理を検討する際は、必ずその中心にブランドストーリーがある。ブランドストーリーに照らし合わせて財務も含めたポートフォリオを効果的に管理し、よりスピーディーにグローバルブランドとしての存在感を高めているのである。

なぜ日本企業の海外M&Aや複数ブランド管理はうまくいかないのか?――“ブランドストーリー発想”によるマネジメントのすすめ

【IBMのケース】

事業戦略と連動した
IBMの「ブランドストーリー」

 ここで、「ブランドストーリー発想のポートフォリオ」で、効果的に企業全体の価値を高めているIBMのケースをご紹介したい。

 IBMは、ITの上流(コンサルティング)から下流(メンテナンス)までを事業として揃え、様々な業界の顧客に対応する企業であり、ハードウェアメーカーからソリューションカンパニーへとビジネスモデルの変革を成功させた企業の代表だが、彼らのもうひとつの特徴は、ブランドストーリー発想でブランドポートフォリオを見直し続けている点にある。

 1997年にインターネットの登場が社会に大きな変革をもたらし始めた時は、いち早く「eBusiness」という考え方を打ち出し、2008年には、そのコンセプトを、「Smarter Planet」へと進化させた。まさにこれが昨今のIBMを成長させたブランドストーリーといえる。

「Smarter Planet」とは、“地球をより賢く、よりスマートにしたい”と願うIBMのビジョンに端を発した概念で、その思想は「IBMは、顧客企業および社会とともに、世界中で変革の実現を支援する」という事業スタンスに結実している。そこには、「最新テクノロジーによって、よりスマートな企業、社会の実現を加速させ、企業、ひいては国家の成長戦略を支える原動力になりたい」という、IBMの事業理念が込められている。