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EV需要の拡大にブレーキがかかったことで、自動車業界のEV事業の収益性は急速に悪化している。日系自動車メーカーにおいても、新型車の販売延期や開発中止が相次いだ。そのあおりを受けているのが、下請けの自動車部品メーカーである。ダイヤモンド編集部は、自動車業界アンケートで、「EVの計画を後ろ倒ししたことで、サプライヤーに不利益を与えた自動車メーカーで最も悪質な会社」を聞き、結果をまとめた。長期連載『自動車 “最強産業”の死闘』内の特集『自動車業界350人アンケートで示す“危機の本質”』の本稿では、日系のみならず、欧米の自動車メーカーも損失を部品メーカーに押し付けている実態を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)
EV開発プロジェクトの中止やEV減産で
下請けに損失を与えても、十分に補償しない大問題
世界のEV(電気自動車)メーカーが逆風にさらされている。
国際エネルギー機関(IEA)によれば、2024年の世界のEV販売台数(乗用車)は前年比25%超増え、1750万台となるなど順調に伸びたように見える。
しかし、その実態は、中国市場が孤軍奮闘しているだけ、といっても過言ではない。最大のEV市場である中国が前年比約40%増の1130万台と、需要拡大をリードしたのだ。だが、同市場の拡大の内実は、EVの過剰供給、値下げ競争の結果であり、中国でEVを販売する自動車メーカーにとって、とても喜べるような事業環境ではない。
中国以外のEV市場の成長は、むしろ鈍化している。欧州は前年比ほぼ横ばいの318万台、米国は10%増の152万台だった。
その結果、EV最大手の中国BYDや米テスラは25年7~9月期で前値から3~4割減益となっている。世界最大手ですら苦境にあるのだから、EVで後発組の日系自動車メーカーは何をかいわんやである。そして、そのしわ寄せが、部品メーカーにいっていることも想像に難くない。
ダイヤモンド編集部は、自動車業界アンケート(下図参照)で、「EVの計画を後ろ倒ししたことで、サプライヤーに不利益を与えた自動車メーカーで最も悪質な会社」を聞き、結果をまとめた。すると、欧米系を含む自動車メーカーが、損失を部品メーカーに押し付けている実態が明らかになった。トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車、三菱自動車、テスラなどは、EVの販売不振を巡って、サプライヤーに対してどのような対応をしているのか。次ページで詳しく見ていこう。








