これもやはりビジョナリーな夢だ。月に行けるというのは、絵が思い浮かぶ。実際に、その後、アメリカは何度も月に宇宙飛行士を運んだ。月に行った日本人はまだいないが、宇宙ステーションには、すでに何人もの日本人が出かけている。私はまだ月で働いていないが、人類にとっての夢は実現したのだ。

 近年の例で言うと、トヨタ自動車の先代の代表取締役社長であった渡辺捷昭(わたなべ・かつあき)氏の言葉も心に残った。「走れば走るほど空気がきれいになる車」というものだ。

 そんなことはあり得ないと思う人も多いだろう。しかし、このメッセージはトヨタの社員の心にはずいぶん刺さったようだ。というのも、トヨタの社員には2つの心に引っかかる問題があるといわれている。

 1つは、自分たちが頑張って車を作れば作るほど、空気が汚れエネルギー資源を消費するという資源・環境問題。もう1つは、自分たちが頑張って車を多く作るほど、交通事故で怪我人や死人が出てしまうということだ。そのうちの1つに、このメッセージは刺さったのだ。

 ビジョンを提示する際の重要なポイントであるが、当然ながら、まずは自分の会社の人たち、仲間の心に刺さらないといけない。自分の会社の人たちが共感する内容でなければ、誰もついては来ない。その意味で、この言葉はトヨタの社員の急所を突いた形になった。

「こうなっていたい」という姿を、社員がありありとイメージできる形で示す。考えてみれば、これほど重要なリーダーの仕事はない。ベクトル合わせだ。やりたいことである夢を提示し、それを、なすべきこと、使命に置き換えていく。これも1つの自分事化の道だ。

 宇宙戦艦ヤマトから一節を借りるのであれば、「誰かがこれをやらねばならぬ。期待の人が俺たちならば……」である。

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筆者である野田稔さんと伊藤真さんが塾長を務める
人材の再教育を通じて雇用の流動を高め、社会全体での終身雇用を目指す
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