昨年に続いて今年も公的年金の運用損が大きな記事になった。たとえば「読売新聞」(6月27日朝刊)は1面トップに「年金運用10兆円赤字」と打ち出して、2面にも解説記事を載せた。
重要な問題だが、たぶんいちばんわかりにくいのは、この損失の影響だろう。当面年金給付などに影響はないが、将来は給付の削減や保険料の増額につながる可能性もあると報道されている。なにも影響がないとすれば直感的におかしいが、具体的な影響は見えにくい。筆者の理解では、この種の損失は、将来の「マクロ・スライド」の幅や調整期間の長さ(長期化)の変化に影響するはずだ。前回の年金改革で決まったマクロ・スライド方式は、インフレに対する調整を年率0.9%値切るかたちで実質的に給付を縮めるものだが、これは将来の人口動向等の各種の基礎率にも影響されるので、現時点でいくらの影響があると明示しにくい。
年金保険料は目下引き上げの上限が決まっているが、年金財政が悪化した場合には、引き上げが行なわれないという保証はない。
10兆円の損は大きいが、長期にわたり、かつ多くの要素が影響する将来の調整を前提とすると、いくらどう影響するという計算が難しい。なんとも曖昧で責任を問われにくい仕組みを考えたものだ。
一方「責任」といっても、何が悪いのかの特定は難しい。
最もマスコミ受けしそうな意見は、官僚(ないし天下り)が運用すると上手くいかないのだ、というものだが、似た条件で運用している民間の主体である企業年金は、平均17%を超えるマイナス利回りのようであって、もっと悪い。