親が借金を背負って、当事者も含めた家族全体が身動きが取れなくなっているケースも、少なくない。

 バブル崩壊以降、経済構造が大きく変わってきたことも影響しているのだろう。

 当事者の親の年代が、これまでのように退職金や年金といった安定した収入を得られる見込みが小さくなり、家庭を支えきれなくなってきているのだ。

 そんな困窮家庭から子どもを世帯分離しようにも、当事者はアパートが借りられない。生活保護など福祉に頼ることへの抵抗感もある。

 それでも、親自身が、相談に訪れるなど、動こうとしない。だから、当事者も家族も自立できずに地域で孤立し、生活が煮詰まる。

 年金で何とか維持できていた親の時代と違い、これから先は、まるでパンドラの箱を開けるように、大変な事態が一気に押し寄せるのではないか。

当事者の親も社会から断絶
“声なきSOS”をどう掘り起こすか

前回の連載でも取り上げた、制度の狭間にいて孤立する人たちの“声なきSOS”に、私たちの社会はどのようにして関わることができるのか。

 冒頭の事例検討会では、その場で報告されたものとは別の当事者の話になるが、まず母親には自立支援を申請し、環境の変化を受け入れるようにと何度も勧めたという。しかし、その母親自身、役所に手続きに行くだけの力がなかった。

 長年引きこもる当事者の親たちは、会社の同僚や友人らとの誘いを断わり、だんだんと社会から撤退して、地域に埋もれていくことも少なくない。

 親自身のメンタル面での問題もあって、相談につながらないといった家族へのサポートは、地域の課題でもある。