3、多様性と螺旋の原理

 大人は、子ども以上に飽きやすいものです。大人を対象に学びを提供するときには、学習目標を見据えた上で、多種多様な活動を組み合わせ、徐々に低次の活動から高次の活動にステップアップさせ、飽きさせない工夫をする必要があります。

 そのためには、同じ学習内容でも、まずは座学で学び、次はグループワークをし、その次はエクササイズをして…と、様々な学習活動を通して学んでいくようにします。あたかもらせん階段を上っていくかのように学習内容を組み上げ、飽きさせないようにしながらステップアップしていけるようにデザインします。

 ただし、多様な活動をしながら、らせん階段を上るうち、「今、なにをやっているのか。今、なにを学んでいるのか」を見失ってしまう場合があります。それを防ぐために、「ここまで、〇〇について学習しました。次は××について説明します」というように、節目節目で全体の中のどの地点にいるのかをアナウンスしたり、学習内容全体を構造化した図を何度も示すなどして、常に全体構造を理解してもらえるようにします。

4、知識と体験の原理

 多様な活動を組み合わせるとはいっても、活動ばかりを盛り込めばいいというわけではありません。「概念的な知識を学ぶこと」と「体験や実習を行うこと」とのバランスをうまく取りながら学習を組み立てるのがポイントです。

 概念的な知識だけを積み重ねても、実際の行動の変化には結びつきません。かといって体験だけ、現場経験だけをさせていても、経験を振り返って考えたり、知識として理解することが無いと、身につきません。体験はそのまま放置してしまうと、「ああ、いい体験」をしたね、というようなかたちで、流れていってしまうからです。

5、学習者共同体の原理

 人は学ぶときに他者を必要とします。さまざまな学習研究において、他者との相互作用の中で学ぶことの重要性が示されています。

 せっかく貴重な時間を割いて研修という場に集まっているのですから、1人1人が力を出しあい、参加者全員が学べるように協力しあう「学習者共同体」をつくるようにしたいものです。

 そのためには、講師が一方的に話すだけの一斉講義だけでなく、講師と参加者との双方向学習や、他者と話し合ったり、一緒に作業をするなど、共に学びあえるような活動を盛り込んだ研修デザインが必要です。