6、フィードバックと内省の原理

 学習した内容は、自ら実践を行い、それに対して他者からのフィードバックを与えられることで、内省する機会を持つことができ、定着します。人は、自分の行った行為や経験を意味づけたり、構造化したりすることを通して、経験を学びに変えることができるのです。内省する時間は、そのための重要な時間です。

 研修中にさまざまな活動を行い、参加者が「面白かった」「役に立ちそうな話を聞けた」と感じたとしても、それだけでは「学び=行動の変化」は起こりにくいものです。

 自分の活動や学んだ内容について、「なにが起こったのか、どう考えたのか、どうすれば良かったのか、自分の仕事に応用できないか」といったことを振り返り「内省する」ことで、「これからは、こうしよう」と、学びを得て、行動につなげていくことができます。

 もちろん、自分1人で内省ができればそれでも良いのですが、他者からフィードバックをもらったり、語り合ったりすることで、より「内省」が促されやすくなるため、研修の時間内に必ず、「内省」のための時間を確保しておくようにします。

7、エンパワーメントの原理

 大人の学習には「痛み」が伴うことがあります。新しいことを学ぶことで、過去の自分のやり方を否定しなくてはならなかったり、新たなものを取り入れることに対する不安や混乱、葛藤が生じることもあります。そんなとき、人はどうしてもネガティブな感情に支配されます。

 ここで考慮しなくてはいけないのは、研修の際に抱いた不安や混乱、葛藤をそのままにして職場へ帰してはいけない、ということです。研修時に感じたかもしれない「痛み」を乗り越え、現場に戻って研修で学んだことを実践に移し、成果につなげていかなくてはならないのは、研修講師ではなく、参加者たちです。

 研修の最後には、参加者たちが立ち上がり、勇気と自信を持って実践の場へ戻っていけるよう、元気づけて現場に帰すことが大切です。

 これら「研修デザイン7つの原理」は、日頃研修デザインを行っている人にとっては、当たり前のように感じることかもしれません。

 しかし、当たり前すぎて、ともすれば忘れられがちな原理でもあります。折に触れてこの「7つの原理」の観点で、研修を見直す機会を持たれるとよいのではないでしょうか。

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