経営 X 人事
人が育つ研修のつくり方 中原 淳
【第3回】 2014年8月4日
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中原 淳 [東京大学大学総合教育研究センター准教授]

私が研修講師に!?ム、無理ですよ!

6、フィードバックと内省の原理

 学習した内容は、自ら実践を行い、それに対して他者からのフィードバックを与えられることで、内省する機会を持つことができ、定着します。人は、自分の行った行為や経験を意味づけたり、構造化したりすることを通して、経験を学びに変えることができるのです。内省する時間は、そのための重要な時間です。

 研修中にさまざまな活動を行い、参加者が「面白かった」「役に立ちそうな話を聞けた」と感じたとしても、それだけでは「学び=行動の変化」は起こりにくいものです。

 自分の活動や学んだ内容について、「なにが起こったのか、どう考えたのか、どうすれば良かったのか、自分の仕事に応用できないか」といったことを振り返り「内省する」ことで、「これからは、こうしよう」と、学びを得て、行動につなげていくことができます。

 もちろん、自分1人で内省ができればそれでも良いのですが、他者からフィードバックをもらったり、語り合ったりすることで、より「内省」が促されやすくなるため、研修の時間内に必ず、「内省」のための時間を確保しておくようにします。

7、エンパワーメントの原理

 大人の学習には「痛み」が伴うことがあります。新しいことを学ぶことで、過去の自分のやり方を否定しなくてはならなかったり、新たなものを取り入れることに対する不安や混乱、葛藤が生じることもあります。そんなとき、人はどうしてもネガティブな感情に支配されます。

 ここで考慮しなくてはいけないのは、研修の際に抱いた不安や混乱、葛藤をそのままにして職場へ帰してはいけない、ということです。研修時に感じたかもしれない「痛み」を乗り越え、現場に戻って研修で学んだことを実践に移し、成果につなげていかなくてはならないのは、研修講師ではなく、参加者たちです。

 研修の最後には、参加者たちが立ち上がり、勇気と自信を持って実践の場へ戻っていけるよう、元気づけて現場に帰すことが大切です。

 これら「研修デザイン7つの原理」は、日頃研修デザインを行っている人にとっては、当たり前のように感じることかもしれません。

 しかし、当たり前すぎて、ともすれば忘れられがちな原理でもあります。折に触れてこの「7つの原理」の観点で、研修を見直す機会を持たれるとよいのではないでしょうか。

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中原 淳[東京大学大学総合教育研究センター准教授]

東京大学 大学総合教育研究センター准教授。著書に『職場学習論』『経営学習論』『活躍する組織人の探究』『研修開発入門』『駆け出しマネジャーの成長論』など多数。企業における人材開発の実証的研究をすすめるかたわら、さまざまな研修・ワークショップなどを開発・評価。近年では、新任マネジャー向けワークショップ「マネジメントディスカバリー」、人材開発担当者向けワークショップ「研修開発ラボ」などを開発。Blog: http://www.nakahara-lab.net/blog/、Twitter ID: nakaharajun

 

 


人が育つ研修のつくり方 中原 淳

新人研修を始め、階層別研修、マネジャー研修など、企業内でさまざまな研修が企画、実施されていますが、意外にも企業内での研修開発について企画から評価まで網羅した入門書はありませんでした。『研修開発入門 会社で「教える」、競争優位を「つくる」』は、企業内研修の企画立案・実施・評価まで、研修開発の全プロセスを350ページにわたって解説した研修開発のバイブル的入門書です。本連載では、「研修開発入門」から、研修開発担当者が知っておきたい研修開発の基本的な考え方を抜粋してお伝えします。

「人が育つ研修のつくり方 中原 淳」

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