「この2つさえあれば、なんとかなる」と思い込んでいるファシリテーターは少なくありません。ところが、さまざまなツールや手法で「道具箱」がいっぱいになったとしても、会議中の不安はなくならないし、それどころか、かえって落ち着きをなくす人もいます。これだけ知っているのだからうまくやらなくちゃ、プロとして評価される結果を出さなければ……と、気持ちは焦るばかりです。しかし、そうなるのは当然のこと。「やり方」だけでは限界があるのです。
3つめの要素、つまり「自分自身のあり方」こそが、成功への扉を開ける鍵なのです。
いくらすばらしいスキルやテクニックを身につけても、それを使う自分のマインドがしっかりしていなければ役に立つはずがありません。
「炎」を取り扱える自分になる
対立や衝突、激しくヒートアップする話し合いや、火種のようにくすぶる不満や燃え尽き感からくるあきらめ……。それらはすべて関わる人の思いや信念から発生しています。どんなに冷え切った場面でも、奥底には熱い思いが隠されているのです。だからこそ、それが炎となって燃えさかったり、よどんだガスのように充満し、時に爆発したりするのです。
一方で、人の熱から発生する炎は、活力やエネルギーの源でもあります。新しいものを芽生えさせたり、思いもよらない未来を創り出す種となる可能性を秘めています。
よくファシリテーターは「常に冷静に修羅場の外で関わる第三者」のように思われがちですが、とんでもない誤解です。話し合いが白熱しているのに、ファシリテーターだけが「防火服」でも着ているかのように、涼しい顔をしていることはあり得ません。たとえ防火服があったとしても、そんなものを着ていては役割を果たすことはできません。炎上する会議では、ファシリテーターもまたその影響を受け、心を閉ざしたり、自己防衛的になるものです。
ファシリテーターが炎に焼き尽くされることなく、真に力を発揮するためには、自分の思考や感情と真摯に向き合い、心のトレーニングを続けることが重要です。
プロフェッショナル・ファシリテーターとは、炎の取り扱い方を熟知している人なのです。