今回は、データ転送の規格について取材をしてきた。デジタルカメラや携帯電話などの使い方を変える可能性を秘めた新規格について、話題に乗り遅れないようにチェックしておきたい。

 ソニーが提案する新しい規格は「Transfer Jet」という。年初の展示会でお披露目となった新しい通信の仕組みである。

 ちなみに、現在デジタル機器市場では、新たな通信規格が大流行中だ。すでに「無線LAN」や「Bluetooth」といった通信サービスをお使いの方も多いだろう。今後USBは、HDMIを無線化する流れも見えてきている。つまり、ケーブルというケーブルがどんどん無線に置き換わってきているのだ。

 ただし、これらの規格は使いこなすのが結構大変だった。各機器を設定して認証させる必要があるのだ。さらに、無線の場合にはセキュリティにも気を遣う必要がある。使い慣れてしまえば便利なのだが、エントリーユーザーにはハードルが高いのも事実だ。

 たとえば、携帯電話にBluetoothを搭載しているモデルが増えているが、それを日常的に使っているユーザーはさほど多くないだろう。

従来と逆行する「超近距離通信」が主眼?
「Transfer Jet」の意外な利便性

 そんな無線規格が乱立する中、ちょっと変わった位置づけにあるのが「Transfer Jet」だ。この規格は、「ケーブルをつながずに遠くまで情報を飛ばしたい」という、古くからある無線のあり方とは違うコンセプトで生まれてきた。

デジカメを通信アダプターに乗せるだけでファイルを転送できる手軽さはヒットの予感。

 つまり、フェリカで改札を通るように、デジタルカメラなどの機器を各種の通信アダプタにかざすだけでデータを転送できる仕組みだ。わかりやすく言うなら、これまでパソコンとケーブルをつないだり、メモリカードを抜き差しして写真をやりとりしていたスタイルを変えようというチャレンジである。たとえば、デジカメに溜まった画像を通信アダプタにかざすだけで、パソコンに転送できるようになる。

 Transfer Jetが従来の通信と違う点は、超近距離で使うこと。利用できる範囲は数センチに限られる。「データを減衰させずにできるだけ遠くまで通信しよう」と考えてきた従来の通信サービスのあり方とは、考え方からして違うのだ。

 要は、距離に対する利便性ではなく、通信することでケーブルをつないだりメディアを差し替える面倒さから解放しようという目論見である。