経営 X 人事
人が育つ研修のつくり方 中原 淳
【第4回】 2014年8月18日
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中原 淳 [東京大学大学総合教育研究センター准教授]

誰もが参加したくなる研修にするには?
研修のPR戦略

参加者の期待を高める研修PR

 A子さんの先輩は、若手営業職向けのマーケティング研修を企画し、参加者を募ったところ、参加申し込みが数名しか集まらず、このままでは研修が開催できない、と頭を抱えています。どれほど素晴らしい研修を企画しても、肝心の参加者がいなければ、研修は成立しません。「あの研修はとてもいい企画だったのだけど、人が集まらなかったよね…」ということになっては、残念ながら組織に対する貢献価値はゼロです。

 研修内容にマッチした参加者を集めるためには、企業内研修であっても、多くの研修会社が行うセミナー案内と同様、研修内容を的確かつ魅力的に伝える「広報」「PR」という視点が欠かせません。

 研修を的確かつ魅力的に伝える「研修PR」の目的は主に2点あります。1つ目は、「企画した研修を知ってもらい、多くの人に受講してもらうこと」です。どれほどいい研修を開発したとしても、それをより多くの人に知ってもらい、集まってもらえるよう、働きかけなければ、参加者は集まりません。

 2つ目は、単に多くの受講者を集めるだけでなく、「研修が目的として掲げている対象に当てはまる適切な人に参加してもらい、明瞭な目的意識を持って研修に参加してもらえるようにするため」です。2000年代以降、さまざまな研究により、研修の成果や学習の効果は、研修そのものだけではなく、その前後に行われている活動にも依存するということが分かってきています。事前に研修に関しての情報を得ておくだけでなく、研修目的などについて理解することで、学習レディネス(学習の準備状態)を高めたり、参加するメリットを伝えることで、モチベーションを高めたりすることができるのです。

 ところが、これまで「研修のPR」はあまり重視されてこなかった側面があります。A子さんの先輩がつくった文書のように、研修のタイトルと参加対象者、日程、場所など最低限の情報を記した文書がマネジャーの元に届けられ、強制か半強制的に参加者が選ばれ、「やらされ感」いっぱいの中、研修に参加する、というケースも少なくなかったように思います。

 もちろん、企業内研修である以上、研修は「組織の目標や戦略」に沿って行われなければならず、「やらされ感」をゼロにすることはできません。ですが、その「やらされ感」を最小限に抑え、研修参加者が「研修に参加して良かった」と思ってもらえるような工夫はしたいものです。

 そこで今回は、研修参加者を集め、参加者の期待を高めるような「研修PR」について、考えていきたいと思います。

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中原 淳[東京大学大学総合教育研究センター准教授]

東京大学 大学総合教育研究センター准教授。著書に『職場学習論』『経営学習論』『活躍する組織人の探究』『研修開発入門』『駆け出しマネジャーの成長論』など多数。企業における人材開発の実証的研究をすすめるかたわら、さまざまな研修・ワークショップなどを開発・評価。近年では、新任マネジャー向けワークショップ「マネジメントディスカバリー」、人材開発担当者向けワークショップ「研修開発ラボ」などを開発。Blog: http://www.nakahara-lab.net/blog/、Twitter ID: nakaharajun

 

 


人が育つ研修のつくり方 中原 淳

新人研修を始め、階層別研修、マネジャー研修など、企業内でさまざまな研修が企画、実施されていますが、意外にも企業内での研修開発について企画から評価まで網羅した入門書はありませんでした。『研修開発入門 会社で「教える」、競争優位を「つくる」』は、企業内研修の企画立案・実施・評価まで、研修開発の全プロセスを350ページにわたって解説した研修開発のバイブル的入門書です。本連載では、「研修開発入門」から、研修開発担当者が知っておきたい研修開発の基本的な考え方を抜粋してお伝えします。

「人が育つ研修のつくり方 中原 淳」

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