OJTとは
「業務を通して行うトレーニング」
前回、営業マンに欠かせないスキルとして「商品知識を身に付ける」と「人に好かれる」を挙げましたが、それ以外にも、見積書作成や受発注処理、売上計上処理から与信管理まで、営業の仕事を進めるためのワークフローを習得させる必要があります。さらに新卒の場合は、電話の取り方からビジネスマナーまで、ごく基本的なことも教育しなければなりません。
こうした知識やスキルを体系的に習得させる仕組みを「OJTシステム」と言います。OJTとは「オン・ザ・ジョブ・トレーニング」の略で、文字通り「実際の業務を通して行うトレーニング」です。
大手企業の場合、採用された新卒社員は人事部が主導する新入社員研修を経て現場に配属されるのが一般的です。新入社員研修を1ヵ月以上行う会社もありますが、こうした研修は営業以前の内容、例えば企業理念や社員としての心構え、ビジネスマナーなどの教育が中心となっています。座学で営業スキルを習得するのは不可能ですから、実際の現場業務の中で身に付けさせるしか方法はないのです。OJTシステムが効果的な理由は、まさにここにあります。
例えば、営業力に定評がある某大手証券会社では、営業に配属された新入社員はまず徹底的に飛び込み営業を体験します。担当エリアを決められて、片っ端から飛び込んでいくわけですが、その中にはその証券会社の既存客も混ざっています。そのため「何しにきたんだ。ウチはもう取引しているよ!」などと言われるケースもあるそうですが、会社側はそうしたことも覚悟の上で飛び込み営業をさせるのです。
私の経験でも「あそこは行くな、ここは行くな」「飛び込む前に上司の許可をとれ」などとやっていると、結局どこにも行けなくなります。この証券会社では新入社員同士で成績を競うため、全員が必死になって営業します。そうしたプロセスを経て、現場で通用する営業スキルを習得していくのです。少し荒っぽいやり方ですが、これもOJTの一種といえるでしょう。
OJT制度をつくる3つのステップ
いきなり新人を外に放り出すのも悪くはないのですが、現実を考えると、自社に合ったOJTシステムをつくり、その中で新人教育を行うべきでしょう。
OJTシステムを構築するためのステップを次に示します。
【OJTシステム構築のステップ】
ステップ1……OJT指導員の決定
ステップ2……OJT実施項目の決定
ステップ3……OJTシステム運用方法の決定
すでにOJT制度ができている会社では、ステップ2とステップ3は不要でしょう。しかし、大企業でもOJTがシステムとして整備されていなかったり、形骸化しているケースがかなりあります。そうした場合は、現場の営業マネジャーが主体となって独自のOJT制度をつくり上げるべきです。