これまで規制に縛られていたエネルギー業界の自由化が、今後数年で一気に進展します。電気を作り、売る、その参入障壁がなくなることで、事業者側には新たなビジネスチャンスが生まれますが、消費する生活者の側にとっての「自由化」に伴う変化とは何でしょうか?

「生活者」を中心に
「エネルギー自由化」を描く

よこやま・はるふみ
博報堂エネルギーマーケティング推進室兼生活者データマーケティング推進局マーケティングプラットフォームソリューション部ストラテジックプラニングディレクター。外資系コンサルファームにて、コンサルティング業務を担当したのち、2001年博報堂入社。顧客企業の広告戦略、マーケティング戦略の立案に従事。2011年9月スマートグリッドビジネス推進室(現エネルギーマーケティング推進室)の立ち上げに参画。電力自由化に関する生活者調査や海外自由化事例収集等を実施し、その知見を元に、顧客企業への商品開発、ブランド戦略の提案を行っている。

 これまでメディアで「エネルギー自由化」について報じられてきましたが、それはエネルギー供給に参入する事業者側にとっての「自由化」です。電力やガスを生産する自由、流通・販売する自由……。しかもそれらの多くは、「新電力vs.既存電力」という図式で語られていました。

 しかし「エネルギー自由化」は事業者にとっての「自由化」だけではないはずです。電気を消費する生活者側にとっても、「どのエネルギーを買うか」という選択肢が増えて、「自由」になるのです。

 企業の広告戦略やマーケティング戦略をお手伝いしている博報堂としては、事業者側にとっての「自由化」だけではなく、この「生活者にとっての」エネルギー自由化に、大いに注目しています。

 電気のつくり方、つくる人、送る方法など、選択肢が増えるなかで、人々にとってどのような情報が「エネルギー選び」の決め手となるのか。事業者側は人々に対して、エネルギーのどのような情報を訴求ポイントとすべきなのか。

 私たちは「生活者」を中心に据えて、「エネルギー自由化」を描いてみることこそが重要なのではないかと考えています。

 そこで、エネルギー自由化に伴って生活者の周辺で、「こんなことが起きるのでは」とか、「あんなこともあり得るよね」、「いやもうヨーロッパでは、ここまで進んでいるらしい」というような、いろいろな変化予測やその兆候を、数年来にわたって集めてきました。

 その一端を今回から始まる連載で披露し、「エネルギー自由化」で生活者周辺の何が変わるのかについて、考えていければと思います。