……なんの策もないまま川に飛び込んでいくヌーの群れに、私は現在の日本を見るような錯覚に襲われました。

 黒い土煙を上げながら疾走する、1億3000万の群れ。

 いま日本は、過去の常識に従順なヌーの群れとして、危険に満ちた大河に飛び込もうとしている。立ち止まって考えることができないまま、皆と同じ流れに乗っている。時代が変わり、国のかたちが変わり、テクノロジーが飛躍的に進歩して、あらゆる環境が変化したにもかかわらず、過去と同じやり方で、ひたすら眼前の川に飛び込んでいる。なぜそんなことをするのか、これがほんとうに正しいことなのか、他にやり方はないのか、誰も考えようとしないまま、土煙は河岸へと迫りつつある。

 われわれはヌーではない。このままヌーになってはいけない。

 誰かが橋を架け、誰かが「最初のひとり」として、その橋を渡って見せないといけない。さもなければ日本は、激流に飲み込まれ、どう猛な肉食獣の餌食になってしまうだろう。力を失ったこの国は、河を渡りきることのないまま水没してしまうだろう。

 橋だ。橋を架けるんだ。

 アフリカの大地を去る私の胸に、そんな思いが込み上げてきました。

医者である私がなぜ、
日本を変えようとしているのか?

 私はいま、過去の常識という大河に、大きな橋を架けようとしています。

 それはこの国のシステムを変える試みであり、みなさんの生き方、そして働き方を問いなおす試みでもあります。

 もっとも、私は医者です。脳外科医です。東京都八王子市を中心に、北原国際病院をはじめとする病院やリハビリテーションセンターを展開する医療法人社団、KNIの理事長です。

 医者である私がなぜ、水没する日本に思いをめぐらせ、橋を架けようとしているのか。どうして国のシステムを変え、日本人の生き方や働き方を問いなおそうとしているのか。そこにはいくつもの理由があります。