職場の運営において、他にはないさまざまな実験を行ってきたザッポスが、今また新たな試みに取り組んでいる。それは、「ホラクラシー」と呼ばれるヒエラルキーも肩書もない組織作りである。

 ザッポスは、これまでも究極のカスタマーサービスで知られてきた。ザッポスは靴やファッションを売るオンラインショップだが、「ここはカスタマーサービス会社」だと同社のトニー・シェイCEOが言うほど、他社より一歩も二歩も進んでカスタマーに手厚いサービスを施す企業文化を作ってきた。

 そして、それを支えているのは社員全員が「ハピネス(幸福)」を実感していること。どんなに恵まれていても幸福感はすぐに色あせ、心に不満が忍び込むもの。そんなハピネスの心理学に立った上で、シェイCEOは毎日自分がどれだけハピネスに恵まれているのかを認識しようと社員に訴えてきた。「ちょっとヘンでいようよ」というのも、社内の合言葉という。

 そんな同社でも、今までも重役は「サル」と呼ばれてきた。エラそうに振る舞うのをくい止めるためだったのだが、ついにホラクラシーの導入で重役やCEOの肩書すらなくすという。

究極の企業運営は
「サークル」活動にあった!?

 ホラクラシーというのは、2007年にソフトウェアのエンジニアで起業家であるブライアン・ロバートソン氏が生み出した組織運営のコンセプトだ。これによると、組織は指示系統に従ったヒエラルキーではなく、「サークル」と呼ばれる複数のグループによって構成される。

 サークルは、明解なタスクを達成するために作られており、その中で誰が何をやるかもサークルのメンバーが自主的に決める。もし、誰かが自分に任された役割の達成に失敗すれば、メンバーが話し合って別の誰かにそれを任せる。

 サークルの中にはリードリンクと呼ばれる存在がいて、メンバーに役割を割り当てたり取り上げたりする任務を担うが、そのリードリンクも命令ができるわけではなく、あくまでもサークル内のメンバーの統治プロセスによって、それが決定するという。

 社員は複数のサークルに属していくつかの役割を果たすが、仕事のできない社員は、このしくみによって自然に浮かび上がってくるらしい。なぜなら、そうこうしているうちに任せられる仕事がなくなるからである。そうなるとクビが待っている。