研修の振り返りによって
次の研修の質が上がる

 一方、研修開発担当者、事務局側にとっても、研修後、まず行うべきことは研修の振り返りです。研修を継続的に行い、より良い研修の開発につなげていくためには、研修の参加者に対して、振り返り、リフレクションを促す一方で、研修開発担当者、事務局側もしっかりと振り返りを行うことが大切です。できれば研修実施直後、ないしは数日中に、研修の内容について振り返りを行います。場合によっては、講師にも参加してもらい、事前準備や当日の流れ、事後のフォローなどについて最低でも30分~1時間程度は時間を取って、しっかりと内省するようにしましょう。

 研修の振り返りを行う際に最も大切なことは、一般論を述べるのではなく、関わった全員が「学習者本位のスタンスに立ったできごとの描写」を行いながら話すということです。たとえば、「最初、A班のBさんの自己紹介が長くなってしまい…」「D班のEさんは休憩の時に、寒いからと、コートを羽織って研修を受けていました…」といった具合に、できるだけ個別具体的なできごとに焦点を当てて振り返るのです。また、トラブルが発生したり、なにかうまくいかないことがあったとしても、責任転嫁をするのではなく、「もう一度、この場をつくるとしたら、どのような協力体制を組むべきか」といったポジティブな捉え方をするようにします。その上で、「講師として何ができたのか?」「事務局として何ができたのか?」「どう改善すればいいのか?」を考えて言葉にし、書面に残すようにします。

 このような形で、研修を内省することが、研修開発担当者、講師や事務局のさらなる能力形成に役立ちます。また、そこで生まれたナレッジやノウハウを属人化することなく、組織として継承していくためにも、このように振り返りを共有する場は大切です。

ステークホルダーに対して
説明責任を果たす

 さて、忘れてはいけないのがステークホルダーへのレポーティングです。この連載の第2回「研修内容って、どうやって決めればいいんですか?」でも述べたように、企業内研修を実施する際には、研修の利害関係者に事前の情報提供や提案活動などを行い、後から協力が得られやすいようにする「経営陣」と「現場トップ」のステークホルダー化が大切です。そして、もし事前にこのような活動を行ってステークホルダー化を図っていたとすれば、研修後も当然ながら、研修についてのレポーティングを行い、しっかりと説明責任を果たさなければなりません。というのも、研修に参加していたわけではない経営陣や現場トップこそが、次年度の研修の決定権限を持っているという場合が多いため、きちんとした形で研修報告がなされない場合には、研修の持続可能性さえも脅かしかねないからです。 

 研修の報告書には、研修中、どのようなことが起こり、どのような効果があったのか、といったことを説明するだけでなく、研修の評価データとして設定しておいた指標や、アンケートの記述欄、口コミの評判などの定性的データを入れるなど、ステークホルダーにとって、研修の良し悪しについての印象が持ちやすいように工夫しましょう。
経営陣や現場トップなどは忙しすぎて、いちいち研修のレポーティングをするほど時間を割けない、という場合もあるかもしれません。その場合にも、簡単なエグゼクティブサマリーなどを執筆し、どのような研修だったのかイメージを持ってもらえるように努めることが大切です。